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最近は写真日記。

東京ゴッドファーザーズ:今敏

 友人にずっと薦められていた東京ゴッドファーザーズ。先日時間ができたのでやっと落ち着いて観賞することができた。友人の感想は「何か温かい気持ちになれる」みたいな感じだったか。他にも色々と言っていた気はするが、他に憶えているのは「とにかく見ろ」ということだった。
 実のところ、今敏で思い出すのはPerfect Blueでは無くて、海帰線である。今では再販されているらしいが、僕が持っているのはオリジナルの初版本であるので装丁が違う。丁度、大友克洋作品を買い漁っていた時に偶然手に入れた物だと思う。そうして手に入れたAKIRA CLUBも今では埃まみれである。
 大学に入って直ぐだったか、パーフェクト・ブルーは渋谷のパルコで観賞した。プログラムがあまりにも大き過ぎて、持って帰るのに苦労した憶えがある。今回本当は千年女優を先に見ようと思ったのだが、何故か東京ゴッドファーザーズに手が伸びてしまった。
 千年女優に関しては色々と前知識があったが、東京ゴッドファーザーズに関してはほとんど内容を知らなかった。声優のキャスティングさえわからなかったので、観賞中は色々な声優の名前が浮かんでは消えていった。見終わって1番驚いたのは岡本綾。ついついSteamBoy鈴木杏と比べてしまう。お互いの役が入れ替わっても、ある意味面白い結果になりそうだ。
 ホームレスが主人公であり、ロボットや美少女が出るわけではない。あるのは奇跡の連続である。偶然が奇跡なのか、奇跡が偶然に起こるのか。とにかく物語は日常生活からドロップアウトしたホームレスに、彼らが世界の中心であるかのように奇跡が起こり続ける。それはつまり見ていて安心できる。定番、定番の繰り返しで、何重にも定番を塗り重ねることに依って、物語を安定させ、それがまた新鮮に思える様にできている。
 そういう意味では物語は酷くシンプルだが、脚本が信本敬子なので、画面から目を放しているスキがない。作品がスタートすれば信本ワールドが広がっているのだが、あの洗練された言葉とテンポの良さに毎回驚かされる。SEEDと比べてしまうのは酷だろうか。
 12月のこの時期に、偶然にも東京ゴッドファーザーズを見ることができてラッキーであった。今年のクリスマス・イブは天空の城ラピュタの放送が決まっているが、クリスマス当日には東京ゴッドファーザーズを見るのも悪くないだろう。実写でもできそうで、でもアニメでしかできない作品。僕らの日常には、彼らの様な奇跡は起こらない。それでも僕らは生まれて、生きて人に出会い、様々な偶然の上で一生を送る。作品の中で彼らに起こった様な奇跡を、僕らは一生を通して経験していくのだ。ただの偶然だと思える様な出来事も、視点を変えれば、それが奇跡になる。彼ら主人公であるホームレスは偶然に依って人生を繋ぎ、奇跡に依って生かされていく。一見すると奇跡の連続だと思える東京ゴッドファーザーズ。アニメだからと片づけてしまえば簡単である。しかし実際のところ、僕らの日常の方があり得ない偶然と奇跡に依って支えられているのだ。生かされながら、生きているのか。生きているから、生かされるのか。サンタクロースにでも聞いてみよう。

東京ゴッドファーザーズ
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