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最近は写真日記。

残暑ー鬼頭莫宏短編集:鬼頭莫宏

 ぼくらの2巻は見つからなかったが、残暑は古本で発見。一緒に購入したのは講談社現代新書東浩紀動物化するポストモダン講談社現代新書:若山滋:ローマと長安。ちょっと高めの古本屋だったので、全部で1000円弱。ただ値段は高いものの、他では手に入らないものが置いてあるのでいつも寄り道してしまう。ちょっと前は古本ながら西尾維新舞城王太郎が全部揃っていたし、何気なく河出書房の日本の考古学が置いてあったり。メジャーなものはブックオフで、マイナーなものは他の古本屋でという風に古書店の使い分けができる様になったのは、ある意味ブックオフのおかげでもある。
 表題作である残暑は鬼頭莫宏のデビュー作でもある。デビュー作でありながら妹萌え作品であるが、1987年の作品なので、かなり時代を先読みしている。それ以外に6作品、全部で7作品の短編集である。ヴァンデミエールの翼以前の作品はデビュー作を含み2点。なるたる連載以降の作品が3点。連載終了後が2点である。
 面白かったのはなるたる以後の作品2点である。まずパパの歌。結婚して子供ができ、男はパパになる。その時、男はパパに成る覚悟をする、みたいな。鬼頭莫宏の作品にしてはほのぼのした内容で、それが新鮮だった。
 この作品集で群を抜いているのがポチの場所である。小学生の登下校の話しである。通学路にはポチという犬が居る。その犬が居るために、子供たちは余計な遠回りをしなければならない。犬をどかせば子供たちは面倒な遠回りをしなくても良いものの、犬は既に老犬で「犬の思うがままに」という飼い主の願いで、犬をどかすことはできない。また男子生徒が下校中に、通学路から外れた駄菓子屋に寄り道する。店番をするのは1人のおじいさんだが、老犬と同じ様に居るだけで何かをするわけでもない。駄菓子の代金は自己申告制で各々お金をカゴに入れるだけ。
 短編故にストーリーは簡単なものである。しかし描いているのは鬼頭莫宏なので、そう簡単には終わらせてはくれない。物語に反して台詞の1つ1つが重いのだ。

 「貯金いっぱいたまったよね、JRAに」パパの歌

 「ジャマなものは、ジャマか?」ポチの場所

 「オレの人生寄り道曲がり道だらけ、だったわなぁ。くだらねえ戦争にも行った。工場に努めてみりゃ経営者が夜逃げした。仲間の仕事手伝ったり。店も何回かやったなあ。他人の借金のカタにもってかれたりなぁ。でもそうして、ここにたどりついた。だから、ここにいられるんだってなぁ。まぁ、いつまでやれっかわかんねーけどなぁ」ポチの場所

残暑?鬼頭莫宏短編集
鬼頭 莫宏

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