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最近は写真日記。

待つか、鳴かせるか、殺すか:後編

 結局書類ができあがったのは先週の25日、金曜日だった。それも行ったらできあがっていた訳ではなくて、「ああ、証明書でしょ?今やるから、ちょっと待ってて」と言われ、小一時間。オンボロPCと、インクジェットプリンタがガチャガチャと書類を印刷し、ホチキスで留めて終わりである。やれば1時間もかからない仕事を彼らは1ヶ月近くも先延ばしにしているのだ。ちなみに去年申請した時は、6月に申請し、受け取ったのは9月後半に成ってからであった…。
 それを聞いたイタリア人の友人が「キレないと駄目だよ。直ぐにやってくれないと、僕は動かないって言わなきゃ。ここはイタリアなんだから」と、例を実演して見せてくれた。2年近くも住んでいれば、そういうことは良くある。イタリア大使館に始まり、文化会館や、クェストゥーラ、学生課、銀行や郵便局。待つ国イタリアで、ホトトギスを鳴かせようとしたところで、無駄な努力になることが多い。イタリアに来る前であれば、書類の期限が切れる前には申請に行っていただろう。しかしペルージャの生活に慣れてしまった僕は、「書類を早く出してもらうよりは、申請する日を遅らせよう。それで、いちゃもんをつけられたら、大学の所為にしよう」なんて風に考えていた。案の定、期限が4週間切れていても何の問題もなく更新できたのである。焦って変に疲れるよりは良かったのだ。結果オーライである。
 イタリア人を鳴かせるには、テクニックよりは運だろう。彼らの機嫌が良いか悪いかにかかっている。期限が良ければ、鳴かせるのは簡単であるが、基本的に事務や窓口の受け付けの人間は、朝は機嫌が良くても、午後には不機嫌になっている。
 では、殺すのはどうか?殺す場合は、代替が無ければならないし、代替が無い場合は、自分に取って不利益にならない様にしなければならない。これはもちろん実質的に殺すというのでは無くて、存在を認めないと捉えた方が分かりやすいだろうが、これは海外では難しい。治外法権を有する様な地位であれば、それも可能だろうが、公的バックアップが日本国パスポートくらいしか無い一学生には無理な話しである。自国に居れば、いくらでもやりようがあるが、やはり外国人というのはそれなりの権利しか認められていない。
 僕がこの1年8ヶ月で学んだイタリア式生活といえば、兎も角、待つことなのである。待つことに苛立たず、期待しないこと。待ち人・物が来たら、それで良いのだ。来なかったら、確かめに行き、また待っていれば良い。辛抱強く待っていれば、向こうが痺れを切らして出向いて来るのである。イタリア人に「待ち」で勝てる様になれば、イタリア生活も楽になるのである。