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最近は写真日記。

オンリーワンかナンバーワンか

 「ナンバーワンよりオンリーワン」という言葉を聞く度に、「ナンバーワンは成るもの」であって、「オンリーワンは在るもの」だろうと感じる。窪塚洋介主演のナンバーワンの中で、河村隆一が言った台詞が、後々色々な所で使われた。このナンバーワンというスペシャルドラマは、ホストクラブの話しであって、その中での「ナンバーワンよりオンリーワン」という意味ならばわかるが、人生において使われると、上記の様な疑問が浮かぶのだ。というのもホストクラブにおいてのナンバーワンは、結局の所お客さんからの指名であって仕事の結果だし、オンリーワンは「自分が成るもの」では無くて、「見つけたもの」だからである。
 SMAPが歌い大ヒットした「世界に一つだけの花」。作詞・作曲は槇原敬之だから、その背景は何となくわかるのだけれど、ただ「花屋の店先に並んだ、いろんな花」というのは、既に選ばれた花である。果物屋に置き換えると、僕にはかなりリアルなのだが、出荷された商品というのはある一定レベル以上の基準をクリアしている。つまりその時点でナンバーワンに成っていなくても、商品価値の在る、オンリーワンなのだ。それ以外は一般の消費者の目に触れることなく処理される。つまりこの場合、オンリーワンで無いものは、ナンバーワンに成る資格も無く、処理されるのである。
 また槇原敬之の詞は、「人と人を比べずに、自分は自分で在るように。それぞれにオリジナルの個性を咲かせる種を持っているのだから、その種を育てれば良い」というものだが、実際「オリジナルの個性を咲かせる種」を育てるのは、ナンバーワンに成る以上に困難に思える。ナンバーワンは、そのまま何かで1位に成れば良いのだ。しかしオンリーワンの様に、オリジナルであるということは、基準が無いからこそ安直なものでは無いはずだ。
 森博嗣の「その瞬間に世界中で誰も考えていないことを、自分1人が考えているという楽しさ」が示すオリジナル性と、「僕らは生まれながらにして特別なオンリーワン」が示すそれとでは、明らかに差違がある。プライドのハルに「ただ俺は何ていうか、ヌルい奴とズルい奴が嫌いなの。一番目指さない奴ムカつくんだよね。自分が自分らしくあればいいなんて、ハナっからそういう言い訳用意してる奴ら、ヘドが出るんだよ。そして1番になった奴のこと妬んで、愚痴言って、努力もしねえで酒飲んでタバコ吸ってさ。適当にここらへんでいいだろって諦める。そういう奴らほんとムカムカするんだよ」と野島伸司が言わせているが、僕が考えているオンリーワンとナンバーワンの関係もこういうものだろう。
 「1番に成れない人だっているわ」と突っ込まれて、「自分らしくあればいいなんてさ、限界まで目指した奴だけが、最後に言えることでしょ」とハルは答えている。世界に一つだけの花を咲かせるには、オンリーワンの種を持っているだけでは意味がない。それぞれに自分の思うところのナンバーワンを目指した結果が、オンリーワンなのだ。その過程と結果が在って、初めてオンリーワン足り得る。花を咲かせるためには、それだけの代償が必要なのである。