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最近は写真日記。

イノセンス:CASSHERN:キューティーハニー:APPLESEED:そして下妻物語

 書こう書こうと思って先延ばしになっていた映画の感想。年末から2月までに見た作品である。イノセンスはJULIAがDVDをイタリアまで送ってくれ、ここでお礼を。色々とありがとうございます。学生の頃からお世話になってばかりですみません。
 イノセンスと対比する場合、多分スチームボーイが上映時期や監督の差違など良いのだろう。もしくは同じ士郎正宗原作のAPPLESEEDが比べやすいのだろうが、上記の作品を同時期に見た僕としてはイノセンスCASSHERNの対比が分かり易かった。通常であれば同じ実写映画としてCASSHERNにはキューティーハニーを持ってくるのだろうが、キューティーハニーにはAPPLESEEDを対比させたい。下妻物語は、別枠で。スチームボーイに関しては過去に感想を書いているid:ain_ed:20040801。
 と、当初は考えて、その内書こうと思い放置していたら、何を書こうとしていたのか曖昧になってしまった。それでも憶えている範囲内で、簡単に記しておこう。
 ネタバレは無いが、長くなるので。
 イノセンスCASSHERNイノセンスのOPシーンを見た時には「美しいな」とは思えたが、物語、脚本に関しては?の連続だった。僕は、押井守が好む音楽と映像だけのシーンが好きになれない。パトレイバーや、Ghost in the shellにしてもそうだが、同じ手法で毎回演出されても「で、音楽と映像だけで勝手に読み取れって?映画なのに?」と嫌気が差してしまう。ただパトレイバーGhost in the shellには若さというか熱があったのだが、今回のイノセンスに関しては伝わってくるものが何も無かった。というより、僕にはほとんど何も読み取れなかった。
 同様にCASSHERNもそうだった。救われているのは僕が原作キャシャーン世代では無いという事だろうか。もし原作を見て育っていたら、どう感じていただろうか。CASSHERNは全編CGが使われているのだが、特にメカはファイナルファンタジーか?と思った程、ゲーム映像化していた。そして物語も、脚本もイノセンスと同様、それで?と思わざるを得なかった。
 イノセンスCASSHERNどちらも「綺麗だ」「CGでこれだけの背景が」とは思えたものの、映画作品としては映像負けしている。イノセンスGhost in the shell程のアイデアも無く、あれだけの映像、音楽を使う必要も無く、押井守が「イノセンス」という題名で小説を書いた方が早い作品だろう。CASSERNにしても、PVと言ってしまうとそれで終わってしまうのだが、とにかく脚本がしっくり来なかった。言葉に重みが無いというか、どっかの作品で聞いた様な台詞ばかり組み合わせて、戦争とか命とか問題にしています、としか感じられなかった。ヒーローもの、エンタテインメントで終わらせておけば、あの演出であれば、もう少し興行的にも成功したのでは無かろうか。
 そういう意味でキューティーハニーは、庵野秀明らしく良い意味でツッコミ所満載だった。戦隊ものヒーローものを愛しているからこその、視点だろう。何よりも実写をセルアニメの様にして、ただの実写化だけで終わらせていないところは、面白い演出だった。そしてAPPLESEEDもまた3DCGで描かれているが、モーションキャプチャーを採用し実写に近づきながら、キャラクターはセルアニメを目指している。つまりキューティーハニーにしても、APPLESEEDにしても、実写、3DCGを用いながらも、目指しているものはセルアニメの1つの方向性だった。その可能性を示しただけでもこの2つは十分価値があると思う。作品のデキとしては、APPLESEEDの方が完成されているとは思うが、キューティーハニーの様にB級を狙っている作品で、あそこまで遊べたら良い方だろう。
 ランクをつけるとしたら、APPLESEEDイノセンスキューティーハニーCASSHERNの順だろうか。
 そしてその4つの作品を見て、1ヶ月程して観賞したのが下妻物語だった。以前から深田恭子を可愛いと思えず、土屋アンナイタリア語会話で綺麗なハーフだとは思っていたが、演技できるのか?と不安に思っていた。作品を見て驚いた。深田恭子が可愛い。土屋アンナは演技というより、素だ。素なのだが、それがキャラに成っている。そして何よりも演出、脚本が面白い。原作がしっかりとしている、というのもあるが、それは実写化でもアニメ化でも無く、しっかりと映画に成っている。CGを使いセルアニメを用い、演出はコミカルで、まるでアニメを見ている様な感覚なのだが、そうかと思えば適度に人間を描いている。CASSHERNの紀里谷監督同様、中島監督は映画屋では無いのに、そういった視点をしっかりと持っている。CGを多用せずとも背景に凝らずとも、ましてや思想を全面に押し出さずとも、面白い作品はできるのである。最近の邦画でエンタテインメント作品で、ここまで完成度が高いものは無いだろう。現代日本を描くヒューマンドラマや日本的映像美に偏った作品ばかりをヨーロッパに出品しないで、こういった、ただ楽しめる作品こそ世界で試してみるべきだろう。
 上記4作品と、下妻物語ではあまりにも隔たりがあり過ぎてランクのつけようがないのだが、キューティーハニーは脚本次第で、下妻物語に近づけた気はする。ただそれでもB級を意識した演出を捨てないと、やはり下妻物語には届かないのだけれど。そこが庵野秀明なのだから、しょうがないと言えばそれまでなのだが。やはり庵野秀明にはアニメの世界で活躍して貰いたい。というか、結局のところ彼がアニメに持ち込んだ手法は、今では実写世界でも当たり前に成っていて、それを今更庵野秀明がやったところで新鮮味は無い。何だったら映像の世界から抜けて、漫画とか書いたら案外面白いのでは無かろうか。安野モヨコにばかり描かせていないで。

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