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最近は写真日記。

おめでとう

 大学に入学し、すぐに研究室に入った。残念ながら同期(入学時の、と限定した方がわかりやすいかもしれない)の人間とは馬があわなかった。馬があわないと言っても、険悪なムードになるとか、毛嫌いするとかではなく、ただ単に、話しをしても、当たり障りのないことに始終して、コミュニケーションが発展しなかった。思い付く理由としては、僕は1年間留学していた為に、彼らとは1つ年の差があった。そのため同期の中でも僕に敬語を使う人がおり、何らかの壁があった様に思われる(自分のために断っておくが、今まで僕は他人に敬語を使えと言った事はない)。そのため残念ながら、同期で今でも連絡を取り合っている友人は1人しかいない。
 彼もまた研究室で浮いていた1人で、年齢も僕と同じである。僕らが似ているかと言われると、まるで正反対なのかもしれないが、後々の研究室での役割は上手くバランスが取れていた様な気がする。たった1つ根本的に似ているとすれば、それはお互いが「縄文顔」ということなのだが、他人から言わせると「動のain_edさん、静のKさんだけれど、場での役割はほとんど同じ」なのだそうだ。
 僕らの同期が大学3年に上がる時、僕は留年組として春休み中の登校を余儀無くされた。1つのクラスに集められた留年組のほとんどが知った顔だったのだが、その中にいるはずのないKを見つけた。僕は基本的に落ちこぼれ組だが、彼は要領良く単位を取り、研究室の発表でも「考古学の方法論の使い方としては完璧だ」と教授に太鼓判を押される程の力を持っていたのだが、手違いがあって、留年することになったのだった。
 僕らはそうして下の代と同期になり、彼らとは既に年の差が2つあったのだが、Kは「さん付け敬語」、僕は「呼び捨てタメ語」という感じでそれぞれのキャラが確立されていった。彼らに聞くと「いや、Kさんは恐怖の対象ですよ。なんて言うか恐さがあるんです。ain_edは、まぁ、ほら、ねぇ」という具合だ。
 そんなKは考古学に別段興味もなく、大学卒業後、一般企業に就職した。そんな僕らは、僕がイタリアに行っている間にも、何気なく、本当に何となく連絡を取り合っていて、「結婚とか相変わらずないよな。っていうか、子供とか、それぞれが家族を持っている姿がイメージできないよね。ある意味キモいっていうか」なんてメールを送りあっていた。
 そんな彼だったが、僕が結婚を決めた去年の夏、同じ様に「俺も結婚しようと思ってさ」と既に式の段取りをしていることを知らされた。「マジで!これで、出産とかまで被ったら本当に笑えるけどな」「ないない、お前とは違って、俺はちゃんと計画的に家族は増やすから」なんて言っていたのに、イタリアに渡ってからすぐに「俺の奥さんも妊娠してました」というメールが届いた。
 そして昨日、22日、元気な女子が産まれたという。僕らの赤ちゃんと同じ日にちとまではいかなかったが、同じ5月産まれ。しかも日本に帰国して知ったのだが、僕らが今住んでいる場所は、Kが通っていた高校のすぐ近くで、僕ら夫婦は勝手に子供達の許嫁宣言をしている。もちろんKは「お前の子供だろ?そんな遺伝子は、俺の娘に近寄らせん」などと幸せそうに、既に親ばか度を発揮していた。
 別に密に連絡を取るわけでもないし、どこかに改まって遊びに行くわけでもない。ましてや悩みごとや人生相談をする様な仲ではないけれど、大学入学時から偶然が重なり今でも繋がっている。研究室にいた頃から、お互いが「ああ、あいつがあの場に居れば大丈夫だろ」と変な信頼関係があったが、ジュニアの世代になっても、そんな関係が続きそうである。
 何はともあれ、おめでとう。