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最近は写真日記。

妊娠したら結婚しないといけないの?よりは妊娠しないと結婚できない、が近かった。のでき婚の俺が来ましたよ

”データとしての”高い結婚願望の裏にあるのは、「子どもは欲しい、だが結婚制度の中でないと育てにくい」という認識ではないだろうか。もし結婚と妊娠出産育児を切り離して考えられる環境ができた時、結婚したい男女はどの程度減るのか(あるいは減らないのか)ちょっと興味がある。

「でき婚」という日本的システムより。
 「結婚制度の中でないと育てにくい」は正解。社会的な他者の視線は、子供がいる=結婚している、が基本である。そんなことはない、という反論があるかもしれないが、日本においては間違いないと思っている(超主観だけれど、断定できる自信がある)。「子供がいますよ、2人」と聞いたら、「旦那さん(奥さん)は何を?」と反射的に質問したり、考えたりするだろう。今の日本で「子供がいますよ、2人」と聞いて、「その子供の片親は何を?」とはならないはずである。つまりその無意識の構造下には子供がいる=結婚している(結婚歴がある)という公式が成立している証拠である。結果的に子供がいる、なのに結婚していない(離婚でもない)、人間は異質な存在となる。実際、僕の職場にも結婚していないが子供が2人いるスタッフがいた。内容として、スタッフの子供ではなく、パートナーの連れ子という設定だったが、「子供がいて、同棲もしているのに、結婚とかしていない人間にちゃんと仕事ができるのか?」という質問が他部署からあったのは事実である(その設定の影響ではないだろうが、通常からミスが多くそういった部分を勘ぐられる要素はあったが)。
 経済的にも、子供を持っている場合は結婚している方がお得である。まず会社からの手当が違うし、控除額も変化する。配偶者控除内で働けば、約200万以下の収入で(扶養控除額を超えても)お得となる。未婚で子供がいる場合の裏技として、年収を受給額ぎりぎりに抑え、児童扶養手当をもらい、それでいてパートナーの年収もきっちり、という状況であれば、お得、とまではならないまでも、社会的なデメリット(上述)の部分を抜けばカバーは可能である。
 それと個人的な心配事ではあるが、未婚の状態で海外滞在をした場合、例えば僕の様にイタリアに行った場合は間違いなく、結婚していないとデメリットである。ビザでつまずき、滞在許可証でつまずくことになる。おまけに男親が長男を持つか、女親が長男を持つかで、また滞在許可証の交付の仕方が変わる(可能性がある、と濁しておく。何せイタリアなので、僕がいたペルージャではそういった張り紙があった)。要するに海外に行った場合、個人生活上の影響云々ではなく、行動単位のユニットとして、個人か家族かが問題となる場合がある、ということである。
 僕ら夫婦も時々「もし」を考える。あの時、ジュニアを身ごもっていなかったら僕らは結婚したのだろうか。9割方、「結婚しなかったよね」と答えが出る。奥さんは結婚せずに働いていただろうし、僕はイタリアに残っただろう。その文脈で考えれば、子供ができたから僕らは結婚したと見てとれる。では子供ができていなかったら、結婚しなかったのだろうか。それはわからない。id:KEN_NAITOとその彼女のように、結婚を前提につき合っていた可能性が一番高いが、そうならない可能性も十分に考えられる。
 僕は「妊娠した」という言葉を聞く前に、プロポーズをしていたし、結婚を考えていた。が、現実的に結婚する為には乗り越えなければいけない壁が山積みだった。僕はイタリア、奥さんは日本、僕は学生、奥さんは社会人。働き手が妊娠により収入が止まれば、子供を出産するどころか生活自体が成立しなくなる。そういう意味では、妊娠は一つのきっかけだった。「できちゃった結婚」と言葉では軽々しいが、僕らの現実に及ぼした影響は計り知れない。逆に考えれば、結婚してから出産を考えるとなると、そのスタート地点に立つまでに後数年を要した可能性はある。そうして結婚の準備をしている間に、結婚の意識が薄れたり、高齢出産を意識しだしたり、後々の家族計画に影響を及ぼしたりするのだろう。
 また僕らが入籍したのは出産の約2ヵ月前だったが、もし早産だったら、と考えていた。僕は入籍と同時に本籍や住民票を移したので、それほどの混乱はなかったが(それでも色々な窓口をたらい回しにされたが)、出産後に子供の戸籍や児童手当関連を移行するとなると、どれくらいの日数を要するのか考えもつかない。
 そういう意味では、お役所の方々の知識不足も問題だろう。シングルマザー・ファザーになるための講座があっても良いだろうに、そんな準備もない。おまけに例えば僕みたいに海外から帰ってきて、本籍や住民票を移したり、年金とかも移動したりしただけでお役所の方々は色々な所に電話して質問しまくりである。挙げ句に奥さんの出産に関しても、妊娠8ヵ月までは海外にいたので、出産予定日が明確ではないから、出産一時金を許可できない可能性があるとかないとかで、母子手帳をたらい回しである。母子手帳には個人情報がかかれている。それも身体上の。それを異性の職員がたらい回ししながら閲覧するのである。ある意味通常の結婚→出産のプロセスを歩もうとしても、若干のイレギュラーが発生するだけでその様では、シングルマザー・ファザーに対して十分な対応などできるはずもないだろう。
 社会的には子供がいれば結婚していて、もしくは結婚歴があって当然である。経済的には結婚していた方が福利厚生や手当が増加する。そして行政的にはイレギュラーの対応よりも、マジョリティに属した対応の方が柔軟なのである。そういう意味ではできちゃったら結婚した方が無難である。でも、一つだけいえることは、例えできちゃったとしても躊躇する相手とは結婚しないでシングルを貫いた方が良い。社会的、経済的、行政的整備がまだ不十分だとしても、一番の問題はやはり個人の心だからだ。「結婚するか、しないか」という迷いは、結局のところ「結婚」という抽象を言い訳にした自分の心の迷いなのだろうから。
 お金がなくても結婚はできる。無職でも。学生でも。三十路近くまで就職経験がなくても、今では2人の子供を育てている。裏を返せば、結婚なんてそんなものでしかないのだ。制度的なものだ、と批判することは容易く、実行に移すことは躊躇しやすい。何より子育てが始まってしまえばそんなことは些事以外の何ものでもないのだから。