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最近は写真日記。

車、購入

 「車を買い換えよう」そう思い立って、とりあえず車種を決めに行ったのが先週の土曜日。その時にも見積を出してもらったが、営業になめられたのか、冷やかしと思われたのか、あまり積極的に数字を出してくれず、おまけに車種の説明も投げやりだったのでツテを使って営業を回してもらう。車種選びも面倒臭いので、ニーズに一番あった(といっても、他メーカーは見てない)日産セレナに決定。
 試乗車を持って営業に自宅まで来て貰う(車種が決まってるし、行くのが面倒なので)。実はそれまでにめぼしい新古車をカーセンサーで見つけてあって、同様のオプションを新車でつけてどれくらいの値引きになるか具体的に知りたかった。営業が来て早々担当直入に言う。「新古車の見積を出してもらっているので、同じ様な仕様で見積もって頂いて、具体的な値引きを含めた上で、新車を買うメリットがあったら買います。一括が良ければ、一括で。クレジット会社を使った方が良いなら、それで」が、出てきた数字は芳しくない。一応知人の紹介なのでわかって来ていると思ったが、まるで数字に魅力がない。
 「この数字なら新古車を買います」と言うと、「ちょっと待って下さい。全く同じ仕様ではなく、似たような仕様でやらせて頂いてよいですか?」と営業が持参したPCに集中し始めた。出てきた数字はまたしもて「そんなもんですかねぇ」というもの。その時点での値引き額は37万程度。その時点でやっとネットで調べた平均値下げ価格と同等であるが、それでも新古車との開きはその値引き額以上ある。「わかりました。完璧赤字なんですけれど」と、全体の値引き額を48万と提示。この時点で総支払い額は275万円。オプション金額は全てマイナス、という状態である。「これが限界です」と始終困った顔をする営業さん。
 「じゃあ、返事は後ほどということで」と、持参してもらった試乗車に乗る。今乗っているセレナのモデルはC23型で、初代のものである。つまりは現行モデルの2世代前のもので、現行モデルは同じ名前だが、まるで違う車、という印象である。まず何より装備が違う。室内空間も違う。ただ若干違和感があったのは走行性能で、エンジン位置が変わった為にコーナーでのハンドリングがまるで違うものだった。「全然違いますね」と小話をしながら生憎の雨の中を試乗する。
 「可能であれば本日の20時までにご連絡を頂ければと思います」別れ際に名刺に携帯の番号を残す営業。「わかりました」と答え、一度帰宅し幼なじみの元車営業に見積書の確認をする。「ああ、それまだ全然いけるよ。調整している箇所があるみたいだから、そういう数字をつつけば間違いなくまだ落ちるね」その言葉を聞いて幼なじみに感謝すると共に、新車営業への信頼が急降下。仕事だからわかるが、そんな戦略では新古車の魅力に及ばない。
 僕らはすぐに新古車を扱っている中古車屋に向かった。中古車屋と言ってもメーカーの中古車屋で、扱っている車も程度の良い物が多かった。「見積の依頼を頂きありがとうございました。やはり人気車で、他の方々からも反応があります。」と、「中古車だから直ぐにでも売れちゃいますよ」というアピールを始める担当さん。現物を見せてもらい、再度見積を出して貰う。最初に僕が提示した条件は上記と同様+今乗っているセレナの下取りである。「いやぁ、値段、つけられませんねぇ…」と言われたが、「今日、新車の見積をして貰った際にサービスを含めて5万つけて貰いましたよ」と奥さんが強きに出ると、「じゃあ、わかりましたウチも5万付けましょう」と値下げ交渉が始まる。
 事前に他メーカーの元営業に色々と聞いていたのだが、新古車の場合ワンプライスが多いそうだ。下取り車であれば下がる可能性が高いが、メーカー新古車の場合2、3万の値引き交渉も難しいという。実際下取り交渉はスムーズだったが、その後の値下げはかなり厳しくいっこうに話が進まない。一括かクレジットか、という話をしても大差はなかった。「店頭においてある、カラーイメージの為の車のフィギュア、あれって貰えますか」と良くわかんないことを言うと、「Cubeとかですか?あれ、売り物じゃぁないんですけれどねぇ…」と言って、プレサージュのキーホルダーを持ってきてくれる。キーホルダーながら精巧な作りでライトもつけば走りも(プルバック式)する。商談に飽きてきていたジュニアには持ってこいのおもちゃとなった。
 「何がひっかかってます?」攻めに来る担当さん。「値段です」「わかりました。1万ずつ刻みます」提示された値段はこれくらいになったら良いな、という値段に近づいた。「ああ、もう良いですよ。お願いします」ジュニアよりも先に飽きた奥さんがオーケーを出す。「ありがとうございます」と頭を下げる担当さんを制止、「とりあえずもう一度現物を見せて下さい。それと今日来て頂いた営業さんに確認の電話させて下さい」と外に出る。新車営業に電話をかけると、弾んだ声で対応を始める。多分、当日に電話がかかってきた、ということで「注文か」と思ったのだろう。
 「今日は雨の中、わざわざありがとうございました」「いえいえ、こちらこそお邪魔しました」「…えっと、車の件ですが」「ええ!」「やはり新古車にしようと」「…え…?」「いや、値段を少し下げて頂きまして。そうすると機能的にも値段的にも魅力的なんですよ。実際、現状で新車と新古車で35万くらい差があるんで。それだとメリット、ないですよね?」「いやいやいやいや、少々お待ち下さい」「はい?どれくらいでしょうか?」「あ、えっと。そうですね。5分〜10分くらい。本当に直ぐにお電話致しますので」「はぁ。わかりました。でも、厳しいですよねぇ?35万差は?」「…直ぐに電話します!」そう言って電話を切る営業。かなりテンパっていた様子だった。見積した当日に買う、というのが予想外だったのだろう。
 新古車の現物でパワーテールゲートの操作説明をしている担当さんに、「新車の方からちょっと待って下さいという声がかかったので、良いですか?」と了解を取る。一通りのオプションを説明して貰って商談デスクに戻る。「新車、下がると思いますか?」新古車の担当に聞く。「…いやぁ、チャンネルは違っても一応同じ会社なんで、やはりその値段から引くのかなり難しいと思いますよ。引けても数万単位かと…」そうなのか、と思った所に電話が入る。「すみません。おまたせしまして」「いや、こちらこそ申し訳ないです」申し訳なさ過ぎて、もう買うから良いですと言おうとしたところ「えっとですね。現在275万円で、ナビが23万で付いていたと思うんですけれど」「ああ、はい。ありましたね。それで?」「それサービスします」「…はい?」「いや、ウチで持ちます」「…つまり数字で言うと…」「253万円ですか…」「がんばりましたね」「はい。真っ赤っかです」考えます、と言って電話を切り、今度は新古車の担当にその旨を伝える。
 「……本当ですか…」言葉の出ない担当。この時点でほぼフル装備の現行モデル新古車が240万。そして似たような(似ているだけであってフル装備ではない)仕様の新車が253万。差が一気に13万に縮まった。「どうするの?」見積書を見比べる奥さん。「……」無言の担当。「新車にするかねぇ…」と漏らす僕。すると「ちょっと待って下さい」と担当が席を立った。僕らだけになったブースで話し合う。「どっちが良いの?」と見積書をまだ見比べている奥さん。「ん?全然新古車。だって装備が違うもの」「え?じゃあ、さっきの新車の値段って嘘なの?」「いや、本当にその値段だって」「…そうなんだ」(でもこっちの方が僕は良い)と言って新古車の見積を指さした。
 「すみません」戻って来た担当がまた攻める。「何がどうなったら良いですか?値段は本当に厳しいんで、何かサービスとかで」「そう言えば今付いてるナビってiPod繋げられます?」「…ああ、確か専用のコードが」「付けて下さい」「確か2、3千円だったかな…」といってカタログを捲る担当。「ありました、これ…」と言葉が止まる。値段は1万弱。「はい。わかりました。つけます」と何かを諦めた様に書類に何かを記入する担当。「後は?何を?」「そうですねぇ。新車と『中古』の差が20万以下だったら、やっぱり新車を買いますよね。僕は今回その差を最低ラインだと考えていたので」そう言って新車の見積書を見る僕。「…わかりました。235万で買って下さい」そう言って他のサービスなども含めてくれた。
 「それでお願いします」とやっとサインとなるのだが、「その前に、新車営業の方にお断りの電話をさせて頂いても良いですか?」と電話をかける。「…はい。お世話になっております…」メチャクチャテンションが低くて驚いたが、「あのう、申し訳ないです。頑張って頂いたんですが、やはり新古車の方で」「…はい。かしこまりました。…ありがとうございます。…失礼致します」と右肩下がりのテンションで最後の方は声が小さくて聞こえなかった。
 「じゃあ、手続きをお願いします」というと一番最初に「とりあえずサインを」と内容確認をした後に早々にサインをする。その後事務手続きに入ったのだが、気になることがあった。「あの、ナンバーの話がないんですけれど。それって好きなのに変えられますか?」「ええ、変えられますよ」「変えられますか?」2度聞く、僕。「はい。変えますか?」「可能であれば」と言うと「じゃあ、お好きな数字をどうぞ」と違う書類を取り出す担当。(確か別途でお金ってかからなかったっけ?曖昧な記憶を辿る)「…本当は手数料がかかるんですよ。5千円位なんですが。いや、こちらで持ちますから良いですよ。お好きな数字を」キャラを最後の最後にわかって頂けた様で光栄である。
 最後に店長が登場し「いやぁ、ありがとうございます。本当に良いお値段ですよ、これは」「あ、そうなんですか?僕自分で車を購入したことがないんで、実際わからないんですよ。車とか全然詳しくないので」と担当を見ると「…あ、そうなんですか…。でも、いや、本当、初めての購入でここまで値引きして貰えるってないですから。本当さっきの新車なんかも、社員が買うより全然安いですよ、実際」と苦笑いである。
 結果的に新車は70万を超える値引き。新古車は10万を超える値引き、という結果に終わった。新古車の内容を新車で見積もると、税金の内訳が若干変化するものの、360万弱(税金を引くと345万程度)で、差額はおよそ125万となった。
 新車ではないが、展示車・試乗車なので妥当かと思う。裏話を聞くと展示車や試乗車はパーツをいじったりする可能性もある、ということなのだが、メーカー保証が5年弱あるので十分だろう。今回車を購入するに当たり、幼なじみの元車営業にはお世話になった。同様に会社の同僚の元車営業にもお世話になったのだが、やはり専門的なものを購入する場合は専門家に聞くに限ると思った。「車の一番上手い買い方は程度の良い中古を乗り継ぐことです」と知人が教えてくれたが、今回の値引き合戦とか、元の値段とか、商品価値を考えると、その通りだなと実感したわけである。それとそれなりに高額商品ながらキャッシュだろうがローンだろうが値引きにはあまり影響しない、ということも良い勉強になった。イメージ的にキャッシュ一括であれば安くなる、と思っていたがローン会社からのマージンを期待するディーラー側的には、キャッシュの方がメリットがない様である。
 それにしても、本当に嫌な客だな、と我ながら思うのである。