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最近は写真日記。

マンション、購入。

 マンションを購入した。これで結婚、出産、車、マイホームと一通りの経験をした。新築マンションで、3LDK+専用庭(アイン用)。オール電化とか、デザインキッチンとか、部屋が全て防音とか、何よりも玄関が広いってのが一番良かった。モデルルームではなく、不動産会社用の事務所として使っていた物で、若干の割引と全室エアコンが導入済みとかの特典があった。その他にキッチンに合わせた輸入家具と、フローリングのコーティング、それと登記関係の初期費用をサービスとして、3千万弱という数字に落ち着いた。
 「で、具体的な数字が出たところで、ニーズを申します」「…え?いや、一応この数字で会社の方には決済を取らせて」「営業さんの仕事は顧客のニーズを聞くことですよね?」「…はい」「だったら、ニーズを聞いてから決済を取り直して下さい」「…いや、でもですね」「少し前に車を買いまして」「はい?」「新車の営業さんがいらっしゃったんですよ。で、ニーズを聞く前に値引きに入られまして。100万近く値引いてくれたんですが(実際は70万)、僕はニーズが合わないのでお帰り頂きました」「……」「それとエアコンですが、これはメリットにはなりません。日立製でしたよね?」「…はい…」「日立製のエアコンて、市場価値ありますか?ないですよね?」「…ええ…」「それとインフラ関係ですが、各部屋に電話線が引いてあるのは良いんですけれど、ケーブルテレビでのネットだと問題ありませんか?」「あ、そこは皆様一所でモデムを引いてですね、ワイヤレスで」「防音加工してあると、ワイヤレス、あまり機能しませんよね(何となく)」「…そうかもしれません」「そういった危険性があるから各部屋に電話口があるんじゃないんですか?でもそうすると各部屋にルーターなりをおかないといけなくなって、無駄じゃないですか?」「…」「電話のつなぎを一本(2本ある)LANポートにしてくれませんか?」「あ、それはちょっと難しいです。既にできあがってしまっていますので」「でも、コンセントの位置を考えて万が一ワイヤレスが機能しないとなると、ネットワーク機器の位置がおかしくありませんか?どうですか?」「…はい、確かにそうですね。そこはちょっとわかりかねますので、しっかり確認して参りたいと思います」「あと、ホームシアターをつけて下さい(家族は苦笑)」「はい?」「いや、他のモデルルームを見に行ったら付いてたんですよ、ホームシアター。つり下げ型と、自動スクリーンが」「いや、でもそれはちょっと金額的にも」「いくら位ですかね」「20〜100万でピンキリですよ」「じゃあ、その20で良いです。天井につるしてください」「ちょっとそれは…」「いやね、この部屋って例えばモデルルームだったらそういった設備がくっついてくるはずじゃないですか?でも事務所だったってだけで、人が入ってはいるけれど、そこまで金額も落ちてないし、付加価値もないですよね?」「いや、でも、他のマンションよりは1千万くらいお安く」「わかってますよ。でも、一生の買い物なんで、妥協したくないんですよ。後から付けておけば良かったってよりは先に付いていた方が良かったじゃないですか」
 と超強気に出たところで、「いや冗談ですよ」と奥さんが割って入った。「それだけ言っても、無理ってことですよね?」「はい。もう本当に金額的にもサービス的にも精一杯なんですよ」「わかりました。それで良いです。お願いします」と契約に入った。「あ、でも今銀行限度額があって振込とか難しいですよ。知ってました」「えぇ?そうなんですか」「ええ。この間車買うだけでも面倒でしたから」「1ヶ月で1千万の限度額があって、払えないですねぇ」「いやぁ、登記は今月中に…」「じゃあ、現金で全部持って行きますか?3千万くらい」「怖いのでお止め下さい」ということで、振込詐欺の思わぬ余波が消費者の行動を制限する。銀行確認ということになった。
 「あの、今後のスケジュールなど詳細はまた後日お話しますので、とりあえず必要書類だけ記入願えますか?」その時点で時間は夜の11:00である。不動産屋さんは「どこかに泊まる予定です」ということで、行き先はネットカフェだそうだ。
 ということで、「奥さんの実家」の引っ越し先が決まった。僕ら夫婦が借り出され幾度かマンション見学をしたが、最終交渉も何故かうちで行った。僕は契約者じゃないのに、凄い強気で交渉した。多分不動産屋さん的には「何だお前は」という感覚だっただろう。最後に「無理言って、本当に申し訳ございません」と謝っておいた。実家ということもあり、戸建てからの引越なので予算にはかなり余裕がある。ちなみに最初に見に行ったマンションは、今回購入したマンションより狭い癖に5千万弱だったが、「値段は別に構わないけれど、内容よ、問題は」とどうでも良さそうだった。
 良い経験をさせてもらったと思う。今回の交渉でも8割方僕ら夫婦が行ったが、車の購入以上に、交渉が難しいと思えた。僕の感想としては注文住宅に限るだが、奥さんは「妥協が全て」だった。奥さんは元々が建築系なので、不動産屋さんがうろたえる程つっこんでいた。「それ、原価だったら80%ですよね?」「いやいや、施工するのにそんなにかからないでしょ。嘘ばっかり」「あ、良いですよ。サービスでも付けられないなら、施工は私がしますから」そんな言葉ばかりだったと思う。明らかに専門用語過ぎてわからない部分も多数あった位だ。
 タイミング的にも、丁度知人が戸建てを探していて、色々と聞くことができた。予算を聞いたら、僕には一生かかっても稼げない様な金額(つまりはマンションとは比にならない金額)だったけれど、注文住宅というのは煮詰めていくだけでも面白そうだな、と感じた。間違いなく僕ら夫婦はインテリアばかりにこだわるだろう。奥さんは使い勝手を重視し、僕はインフラを重視することになるのだと思う。そんな淡い幻想を抱くことができただけでも、面白い経験をさせてもらったと思うのである。