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最近は写真日記。

押しくらまんじゅうで人を殺しているのさ。悪いのは誰だ?:スカイ・クロラ

 何年越しだろうか。2001年出版だから、ほぼ7年越しである。ハードカバーは実家に置きっぱなしなので、結局文庫版を購入して読んだ。当時うざったく感じられた文体は、今となっては特に躓かなかった。丁度その頃柄谷行人の世界共和国へを併読していて、情報の整理が追いついていなかった。小説を手に取ったのは本当に久しぶりで、以前読んだものから1年以上は間違いなく経過しているだろう。

戦争を知らない大人たちに捧げよう。彼らの過ちは、三つある。

子供たちが自分たちから生まれたと信じている。

子供たちより多くを知っていると思い込んでいる。

子供たちがいずれ自分たちと同じものになると願っている。

それら妄想の馬鹿馬鹿しさといったら、戦争よりも悲惨なのだから。

 この冒頭の文章を読んで当時は満足していた。多分言いたいことはそういうことなんだ、と勝手に想像していた。読んでみて、そのまんまだということを確認した。押井守が映画化する際に、「原作のままだと救いがないので」話の結末を変えたらしいが、特に「救いがない」とは思わなかった。草薙は救われたんじゃないだろうか。大人から見れば救われないかもしれない。が、子供からすれば「それは望んだ結果」なのではないだろうか。結局のところ、「子供は大人になるんだ」という幻想が浅はか、という話である。
 表題の内容が途中差し込まれている。戦争をしている、とはどういうことか。押しくらまんじゅうをしていて押し出された人間が殺し合っているに過ぎない、と。押しているのは誰だろうか。押し合っているのは誰だろうか。兵器を売ったお金で、戦争をビジネスにした結果の繁栄に胡座をかいているのは誰だろうか。面白いかどうかは別として、今は一応ナ・バ・テアに手を出している。

スカイ・クロラスカイ・クロラ
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これを読んでひぐらしを読んだつもりになった。
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お役所仕事になるのは何故か。原因がわかる気がする。