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最近は写真日記。

恐怖心の怖さとは何か

 "the only thing we have to fear is fear itself."
フランクリン=デラノ=ルーズベルト

 実に政治的な言葉だと思う。人生論に置き換え、「勇気」を喚起させることもできる。ルーズベルトはその後何をしたのだろうか。1月にして今年の流行語に選ばれそうなニューディール、つまりは公的介入である。自由主義経済に対して、ケインズ的政策をとった、と換言できる。先日マルクス派とは違い、ケインズ派は介入により市場が安定するものだ、と捉えられる。何が言いたいのか。ルーズベルトが危惧した「恐怖心」とは、ナイトの示す不確実性だろう。先の見えない恐怖により、人はキャッシュを選好し慎重化する。特に企業にあっては設備投資を控え、先行き不安のために、結果的に切らなくても良い損切りをすることになる。企業にとっての損切りとは収支に見合わないランニングコスト削減、事業縮小であり、表だっては雇用調整に目を取られがちだが、それ以上に関連会社や下請け企業などの倒産が失業率上昇に拍車をかけることになる。その後は当たり前のように個人消費は冷え込み、需要は抑制され、結果的に自分の首を絞めることになる。
 ルーズベルトは端的にそれを示したのではないだろうか。ナイトの不確実性が昨今もてはやされるのは、公的介入への尤もたる理由と成り得るからではあるが、実際のところその適用には慎重さが求められるものでもある。つまりは確率分布の描ける状況でのリスクと、描けない不確実性では、当然のことではあるが対応策が異なる。リスクにあっては、回避か拡大させないかと、先手を打てる。が、不確実性にあってはとった行動に対する予防策が重要である。ニューディールが「大戦がなければ成功しなかった」と言われる所以はこの点だろう。つまり公的介入での財政出動分を回収できるシナリオがなければならないのである。麻生さんの定額給付金は、ルーズベルトの言葉の実体でもあり、大戦の代わりに待っているものは消費税の増税であるのだ。
 オバマさんのグリーン・ニューディールは成功するだろうか。成功「させる」だろう。中国、インドと市場規模は確保されている。それこそ確率分布でのリスク管理が可能だ。方向性はそれこそ先日の日経BPに通じるものがあるだろうが、内実は地球との世界大戦の様な気がしてならない。どう地球を騙すのか。グリーンエネルギーが根本解決にならないことを、人口抑制が効かなくなるその日まで誤魔化しきれるのか見物だろう。そういう意味では、テキストの外を見れば、先日の話も的を射ていないわけではないだろう。チラシの裏には変わりないが。
 恐怖心の怖さとは、恐怖から逃れる為にしがみつく希望そのものでもあるだろう。「恐怖心というのは人生の一番の友人であると同時に敵でもある」という言葉がある。必要なのは恐怖心に恐れ、何かにすがることではない。恐怖心に対して確率分布を描けるかどうか。恐怖心をコントロールできるかどうか、なのである。政府が市場に介入することが、ケインズ主義的経済の復権が希望なのだとすれば、それはある意味蜘蛛の糸ともなろう。もちろん「不確実性」が適用され、短期公的介入と、財政赤字分の回収シナリオが成立するのであれば、それは宝刀たり得るのだが、長期化し財政回収が困難になれば、事態は正しく「お先真っ暗」の不確実性が待つばかりなのである。