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apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

ナ・バ・テア引用

「醜いものを、格好の良いものにすり替える。全部そうだ。汚いものを、綺麗なものでカバーする。反対はありえない。外見だけは美しく見えるように作る。しかし、そうすることで、中はもっと汚れてしまう。この反対はない。俺たちの仕事を考えてみろ。格好良くイメージが作られる。今日の写真みたいにな。しかし、実体はどうだ?写真には血の一滴も映らない。オイルで汚れてさえいない」
「どういう意味ですか?僕たちがしていることは、汚いことですか?」
「そうだ」

「それじゃあ、この店は?人を殺す人間のために、料理を作っている」
「ああ、これも同じだ」
「では、みんな汚いんですか?」
「そうだ」
「ならば、しかたがない」僕は少し呆れてしまって、吹き出した。
「仕事なんて、みんな汚いものだ。人間が生きていくこと自体が汚れている」
「そう」ティーチャは頷く。
「問題は、それを、美しいものだと思い込ませるマジックだ。そこが一番の問題なんだ」
「でも、そうでも思わないと、嫌になる。生きていくのが嫌になってしまうから…」
「嫌になれば良いじゃないか」
「嫌になったら、だって、生きていけない」
「どうして、生きなければならない?」
「あなたは、どうして生きているのですか?」
「俺か?俺は、簡単さ、汚いものが、それほど嫌いじゃない」
「そんなの、単なる言い訳です。詭弁です」
「そうだ。そういう単なる言い訳、そういう詭弁の汚さが、好きなんだよ」

 森博嗣ナ・バ・テア』中公文庫より