日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞。という記事を見て、鑑賞を忘れていたことに気がつき慌てて鑑賞。久しぶりに涙を流したのである。 「シンプルでわかりやすくて、良い」というのが奥さんの感想である。僕の感想は「ストーリーはシンプルに。でも奥深く」である。
以下ネタばれ。
つまるところ「サマーウォーズ」とは、何と戦っているのか、という問いが全てとなる。提示されたものを分解すると、「シンプルでわかりやすく」と感じる意味が明確になる。作品の基本構図が全て二項対立なのである。
- デジタル・アナログ
→アバター・リアル
ネット回線・電話
ネットコミュニティ・リアルコミュニティ
- 既婚・独身
- 男・女
- 各家族・大家族
- 都市・地方
- 高齢者・若年層
- 人間・人口知能
- キャリア・ノンキャリア
- インスタントフード・フローフード
- 子供・大人
- 民間・政府
- 師匠・弟子
- 自分の子供・他人の子供
- 団らん食・孤独食
すぐにそれと分かるものだけでも以上の通りである。それ以外にも多分車のデザインとか、サイドカーとか、細かい演出が色々とあるかもしれないが、それらの二項対立がわかりやすく並べられているので、作品そのものがシンプルだという印象を受けるのだろう。その上に作品全体をつなぐ一つのテーマが覆い被さっている。
それは「食事」である。誕生日への食事の準備(紅白まんじゅうなどの地域関係)、その日の食事、そして栄おばあちゃんが侘助に振る舞いたかった食事、臨戦態勢時の食事、そして葬式に対する準備など、計ってはいないが、作品全体を占める食事関係の描写は他の描写に比べて高い割合を示すだろう。
戦をするにもまずは食事なのである。つまり二項対立は全て食事で解決する、と言いたげである。ただし食事はインスタントフードではなく、スローフードが好ましい。自然と人と時間がその背面に隠れているのである。全ての繋がりには「熟成」が必要であり、ファーストフードの様にはいかない、という最近のコミュニティに対するアンチテーゼなのかもしれない。最終的にはそれら全てが融合して、最悪の結果を免れるが、「食事」という一つの項目が、それまでの二項の橋渡しをしていることには代わりはない。
ちなみに僕が涙したシーンは、栄おばあちゃんの手紙である。
「家族とは一緒に飯を食うこと」
「一番よくないことは、お腹を空かせることと、独りでいることだから」
親の気持ちになったのが半分。自分に返ってきた部分が半分。「ご飯だけは手作りで」「ご飯は一緒に」というのが、うちの奥さんのモットーなのだが、それが全てを語っているな、と。僕は成長過程で、その間逆にあった。だから僕に家族観が欠けているのかしら、と振り返る部分でもあったのだった。
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