apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

ホストになってみよう:その2

 ホストクラブの場所をネットで確認する限りでは、普段日常的に通っていた道だった。意識して見れば、しっかりと看板も出ているし、店の前には人気ホストの写真が貼られていた。その横には「随時ホスト募集中」の求人が。しかし外から見る限りでは店がオープンしているのか、お客さんが入っているのかもわからない。もちろんタイミング良く、店内から客とホストが出てくるわけはないので、ホストクラブの場所を確認できた僕たちは、変な満足感を得て帰宅したのだ。
 それ以来夜の街中を幼なじみと歩くと、「以前はまるで興味のなかったモノ」に気を取られる様になり、ホストクラブや風俗店、如何わしい店ばかりを発見する様になった。
 それから少しして、既にホストクラブへの妄想ネタが尽きかけた頃である。幼なじみとゲーセンで、競馬ゲーム*1ではしゃいでいた時だ。気がついて振り返ると、明らかにホストという風体の男性が2人、僕が乗る馬に手をついて、こちらを繁々と見ている。しかし対戦は続くので、僕はそのまま気づかぬフリをして、彼らに思いっきりケツを向けてゲームを続けた。2レース程対戦し、もう居ないだろうと振り返ってみると、「ん?終わった?」とでも言いたげな表情で、彼らがこちらに近づいてきたのだ。
 「ねぇねぇ、ゲーム上手いねぇ。待ってたんだよ」と、以前からの知り合いの様な態度で僕らに話しかけてくる。強引でもなく、圧力もなく、とにかくソフトな、優しげな声で話しかけてくるのだ。どう答えて良いのかわからず、幼なじみと顔を見合わせた。見合わせたと言っても、困惑ではなく、「本物のホストだ!」という好奇心が勝っていた気がする。
 「ねぇ、もし時間あったらバイトしない?時給も良いんだけれどな」返答に困る僕らをお構いもせず、1人のホストが色々としゃべり出した。幼なじみは今にも吹き出しそうな顔をしていた。「バイトって、ホストをやるってことですか?え?ホストの時給っていくら位なんです?」と、好奇心を隠せない僕は、彼の遠回りな説明を無視して、質問した。「えっと、そこら辺でバイトするより良いと思うよ」「そうなんですか?でも僕家庭教師やってるから、多分その時給よりは低いと思うんですけれど。今は1時間5000円貰ってるんで(嘘)」「あ、そうなんだ、じゃあ、多分そっちの方が時給は高いかもしれない。だけど、努力次第ではどうにでもなるから〜」と勧誘モードに入る。
 「どう?興味ある?もしあったら、連絡先とか教えてくれないかな」と説明を締めくくった。それまで黙っていた幼なじみは「あ、彼、興味ありますよ。絶対に(笑)」と僕を薦める。一瞬、「俺か…」とも思ったが、最初のネタの出所は僕なので、そこで否定するわけにもいかず、とりあえず僕が携帯の番号を交換することになった。
 皮肉にも僕らがわざわざ出向いたホストクラブ周辺では、本物のホストに出会えず、僕らの基本行動範囲であるゲーセンにて、彼らの方から僕らを見つけるという結果になった。ホストとのファーストコンタクトはそうして終わった。

*1:僕はメダルゲームは好まないので、この競馬ゲームとは、馬型に跨がり、馬を揺らして対戦するものである