apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

ホストになってみよう:その5

 周囲を見渡すと、僕以外にもう1組男性客がいる。2人組みの男子で、明らかにガテン系である。やはりスカウトされたらしく、見学に来た様だ。遠くて会話までは聞き取れなかったが、明らかにホストを小馬鹿にした様子で、彼らを見ていた。結局10分もしないで彼らは出ていってしまったが、僕は終電も危なかったので、結局始発で帰ることに決めた。
 来ると言われた専務も中々現れない。烏龍茶も飲み終わり、カウンターに持って行ったところ、「あ、どうする?もう帰る?え?ああ、終電が無いのかぁ。うーん、どうしようかね。うん、ああ、始発まで見学していく?はいはい、そしたら好きにしてて良いから」と僕をスカウトしたホストに言われる。
 好きにしていて良いと言われても、並んでいるホストの脇に一緒に並ぶわけにもいかないので、僕はキッチンの中に入って食器を洗ったり、料理を出したりしながら、働くホストを見ていた。
 「いや、そんなことしなくて良いっすよ。本当に。新店舗行くんすか?良いっすね。絶対いけますよ。良いなぁ」とキッチン担当のホストに言われ、仕事は面白いか?とか何が辛いかとか色々と質問した。しかし「僕も始めたばっか何で、どうとも言えないっすけれどね。君ならば絶対に大丈夫っす。いけますよ」と返ってきた答えは、ホストなだけに要領を得ないことが多かった。
 仕事を見ている間に時も流れ、深夜3時頃だったか、新店舗で専務を務めるというホストが出勤してきた。ホストで専務というくらいだから、若い男性を想像していたが、予想に反し、ダンディな紳士が登場した。入り口のカウンターで、色々と話し込んでいるのをキッチンから見ていたのだが、目が合った途端に、手招きされる。
 「はい?」と呼ばれるがままに彼に近寄っていくと、「おはよう。ちょっと外行こうか」といきなり店の外に連れ出された。