apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

ホストになってみよう:その6

 入り口のドアを開け、何処かに行くのかと思えば、専務はその場で煙草を吸い始めた。「煙草、吸わないの?」とライターを出されるが、「僕は、吸わないんです」と答えた。「そか、この仕事興味あるの?」「まだわかりません。見学しに来いって言われたので、一応見に来たのですが」「新しい店、一緒にやろうよ。君、絶対良いから」「そうですかね。考えておきます」そんな話しを一通り話したかと思う。
 不機嫌なジーンの南原教授、というより内野聖陽を見た時に、この専務を思い出した。年齢も同じくらいで、背が高く、口を開けば人当たりが良い。顔や髪型も似ているのだ。それでいて1人でいる時には、何か遠い目をしている様なそんな人だった。若い頃は、相当人気があったのだろう。
 「11月の最後の週くらいには新しい店で、顔合わせするからさ。必ずおいでよ。悪いようには絶対にしないから。ね」と何度も念を押され、「そうですね、そちらの方にも顔を出します」と言わざるを得なかった。「そうか、良かった。そしたら必ずだからね。電話番号とか、連絡先とか誰か持ってる?ん?ああ、彼が知ってる?そうか。待ってるから」と言われ、僕らはまた店の中に戻った。
 時計を見れば、時刻は既に始発が動く時間だった。「すみません。もう始発があるので、先に帰ります」と、僕を連れて来たホストに言い、入り口で専務に挨拶をする。「それじゃ、待ってるからね」と手を振られる。また桜木町の駅前まで送ってもらい、「新しいことが決まったら連絡するから」と次の約束をして別れた。
 スーツ一枚で羽織るものを持っていなかったので、駅のホームは少し肌寒かった。乗客の少ない京浜東北線に乗り、地元の駅に向かう。明るくなっていく街並みを見ながら、少し前に幼なじみとホストについて話題にしていたことを思い出した。その頃はただ漠然としたイメージでホストについて盛り上がっていたが、それが少しずつリアルになりつつあった。