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最近は写真日記。

僕はバスケ部で彼女は:青春てこんな感じ?:転

 学園生活と学園恋愛は順調に進み、二人の恋の盛り上がりに比例して、留学の準備も着々と進んだ。多分「留学」という逃れられない「別れ」が、僕らにとって一番のハードルだったから、比例していたのは恋の方だったと思う。そのハードルを設置したのは誰でもない自分自身なんだけれど。
 3学期も終わり春休みに入って僕は部活を辞めた。僕の高校生活にとって「体育館」という場所はサンクチュアリでもあってホームでもあった。教室は毎年変わるけれど、体育館だけはいつもそこにあって、体育館がそこにある限りバスケ部はいつもそこで練習をしていた。そうするとチア部はいつもバスケ部の下で柔軟とかストレッチとかしていて、その風景は体育館がある限り不変だった。僕らバスケ部は休み時間になれば体育館に行き、練習がなくても放課後は何故か体育館に集まった。だけど全校集会や式典や服装頭髪検査で行く体育館は何か違っていて、それはやっぱり上履きのままフロアに入る後ろめたさみたいな、まるで本質を無視した社会規範に対しての憤りを象徴するかの様で、そうかと思えば部活に入ってないやつに限って、バスケ部のボールを何も考えずに蹴飛ばして遊んでたりして、僕のイライラはただ募るばかりだった。生徒が退いた後に、フロアが埃だらけになって、ボールがそこら中に転がっているの見ると、「きっと好きな女子が犯された時の気分ってこんなだろうな」って要らない妄想してみたり。
 僕らは結局別れずに遠距離恋愛を続けた。半年くらいして僕が留学中に年上にうつつを抜かしてセックスしちゃったばかりに、帰国するまで疎遠になったけれど、それでも帰国してからまたつき合いだした。僕が「ごめんね」と謝ると、彼女はただ「ううん…キモイよねぇ…。…ずっと待ってるなんて。頭おかしいんじゃないかって自分でも思う」って泣きながら笑ってて、でも「ブサイクだね」って笑ってあげられなくて、僕はただ馬鹿みたいに「ごめんね」を繰り返すしかなかった。そしたら彼女が「おかえりなさい」ってギュってしてくれたけれど、僕はただ「…ただいま」と小さな声で答えることしかできなくて、そんな小さい声の自分にビビった。ビビりながら最低最悪ってこういうことを言うんだろうなって思ったけれど、それ以上に心臓と胃の間が痛くなって、また十二指腸潰瘍かなって思ったけれど、別にそういうわけじゃなかった。ただ僕が帰ってきた場所は、確かに僕が帰ってきた場所なんだけれど、元からあったものとは全然違うものなんだと気がついた。なんか布団は一緒なんだけれど、枕が違うっていうか。セーブデータは自分のなのに、他人の家のコントローラーだと全然上手くいかない感じ。そしてそうなってしまったのは、自分のとった行動の結果なんだけれど、そんな覚悟さえできていなかった自分が情けなくて、「何よりも距離に負けたのが悔しいの、私は」なんて彼女の言葉を聞いた時には、リセットなんかじゃなくてブレーカーごと落としたいって思ってしまった。