apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

ホストになってみよう:その20

 「はい、お疲れさまです」と眠そうな顔で代表が口を開いた。「やっとこの店もオープンして、1日目が終わったわけだけれど、仕事の感覚が掴めたか?今日見ていて感じたことは、お前らもっと酒を飲めよ。お前らが飲まないから上の人間がどんどん潰れていくだろう」なんて言い出したので、(体育会系か…)とウンザリ聞いていたが、その後も何が言いたいのかはっきりしないまま、代表の話は終わった。 
 若い専務は話にもならず要するに「お疲れさま」ということだった。専務の方は最初から何かを話すという感じでは無く、「それじゃ、また明日」と簡単に話しを切り上げた。「うん、それじゃあ、今日は解散」と代表の声で、1日の仕事が終わった。
 自分の荷物を持って外に出ると既に空が白んでいる。ジョーが出てきたので、「お疲れ」と声をかけると、「いや、もう眠いっすよ」と疲れ果てた顔をしていた。他のホストたちも、店の前でそれぞれに挨拶を交わして散っていく。「帰ろうか」とジョーと一緒に駅まで歩いた。明日は早い時間にダンスパーティがあるとか、可愛い人なんて1人も来なかったとか、フィッシュアンドチップスが食べたいね、なんて話しをして、駅でジョーと別れた。別れ際に「ああ、明日は僕は遅くなるから。頑張ってね」と言うと、「えぇえええ、マジっすか。早めに来て下さいよ」と、何だか本気で悩んでいる様子だった。
 電車に乗り、家路に着く。30分もかからない距離なのに、どんどん空は明るくなって、家に着く頃にはもう夜が完全に明けていた。月はまだ白い顔をしていたけれど、早朝の掃除をする近所のおばさんには「あら、お仕事?」なんて何だかニヤケ顔で言われ、「ああ、おはようございます。そんな感じです」なんて言いながら家の門を開けた。(こんな朝っぱらから、スーツで、しかも金髪だったら、変だよなぁ)なんて思いながら、取り合えずシャワーを浴びて、目覚ましをセットして、眠りについたのだった。
 起きた頃には目一杯昼間で、夕方の家庭教師に備えて、出かける準備をした。一瞬スーツで行ってやろうかとも考えたが、いつも通り私服で、19時から21時まで家庭教師をこなし、1度帰宅し、夕食を食べ、着替えてから自転車に乗ってホストクラブに向かった。専務には23時くらいに着きますと行っておいたので、特に問題は無かった。(問題があるとすれば、自転車でホストクラブに行くホストって設定だよな)何て一瞬笑えたが、寒く成り出した時期だったので、自転車を漕ぐことに集中したのだった。でも自転車は思いっきりママチャリだったのだけれど。