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最近は写真日記。

京都・大阪・神戸、三都物語:3rd Day@Kyoto

 8時頃に起床。準備をして、10時過ぎにはホテルをチェックアウト。チャー&TAMAとは河原町に10時半ということだったのだが、結局清水寺で合流ということになった。僕らはバスに乗り、五条坂で降り清水寺を目指す。仁王門でチャー&TAMAと合流し、清水の舞台に向かう。「本当は死体を捨てる場所だったんだよね」とか言いながら舞台の上で写真を撮る。おみくじを引いたり、音羽の滝で蛇を見つけたり。そのまま二年坂、三年坂を修学旅行生の様に楽しんで、河原町へ歩いて戻る。
 祇園を歩き、鴨川を散歩し、偶然天皇皇后両陛下ご一行に居合わせ、チャーくんお勧めの料理屋ですき焼き丼を食べる。涼んだ後は嵐山に向かう。その電車の中で、親指を立て数を数えるゲームをしたのだが、僕はストレートで負けてしまった。「これはもちろん罰ゲームでしょう」と、シエナに行った時のことを思い出す。TAMAから「何を叫ぶんですか?」とニヤニヤした嬉しそうな顔で質問を受けるが、何となく叫ぶ言葉は決まっていたので、「うーん、まぁお楽しみで」と返しておいた。
 嵐山に着き、渡月橋に向かう。本当であれば橋の上から叫ぶつもりだったが、川の音が予想以上に大きく、声がかき消されそうだったので、渡月橋手前の広場で叫ぶことになった。叫んだ内容はその場に居た人たちのお楽しみ。ちなみにイタリア語で叫んだ。渡月橋を渡り、嵯峨野に向かう。竹林を歩き、落柿舎周辺で折り返す。途中、喫茶店に入るがあまりにもレスポンスが遅く、みんなハラハライライラする。確認のために注文を2度繰り返したが、それでも間違え、最後は会計でも間違え。どうやったらそこまでトロトロできるのか知りたい。何となくイタリアを思い出した。
 帰り道、渡月橋の上から大きな虹が見えた。何故かOver the rainbowでもTune the rainbowでもなく、リンドバーグのLooking for a rainbowが頭の中で流れていた。虹を見ながら渡月橋を渡る。人力車の呼び込みや、観光客、川で釣りをする人、露店でアクセサリーを売ってる国籍不明の人たち、それぞれが虹に気づき、そちらに目をやりながら、それぞれに体を動かしていた。今まで何度も虹を見てきたけれど、あそこまで大きくて、そしてはっきりとした虹を見たのは本当に久しぶりだった。
 京都駅に着く頃、チャーくんがまた「その新幹線の切符、僕が預かりますよ。それで、そこら辺で売りさばいてきますから」とふざけて笑った。ミラノで別れた時の情景を、多分それぞれが思い出していたことだろう。お土産を買い、新幹線乗り場に入る。チャー&TAMAも入場券を購入し、プラットホームまで見送ってくれる。ミラノの時の様に、僕と彼女は新幹線の入り口に寄り掛かり、ホームに立つ2人を見下ろす。時間を気にしているのか、何故かやっぱり口数が少なくなって、出てくる言葉は「またね」くらいのものだった。発車ベルが鳴り、入り口のドアが閉まる。前回の時の様に、2人は動き出す新幹線を少し追いかけて、そして僕らも手を振った。
 僕らは席に着いて、3日間の旅行を思い出していた。大阪に行き、道頓堀、通天閣を見て、そして甲子園に神戸。最終日は京都を少し歩いて、僕らはまた東京という日常に帰ろうとしていた。彼女は次の日から仕事。そして僕はイタリアへの帰国が近づいている。ミラノの時の様に無言になることはなかったのは、また次がある、そんな確信が僕らの中にあったからかもしれない。一瞬窓の外が光って見えた。雷かと思って窓の外をずっと見ていたら、遠くの方で花火が上がっていた。しかも川沿いに、2ヶ所。同時に2ヶ所の花火が上がっているところを、僕らは新幹線の窓から眺めていた。虹に花火。どちらも消えてしまうものだけれど、それを見た人の中にはしっかりと残る。それは同じ時間、同じ空を見ていた証拠なのだ。時間を共有していた証拠なのだ。大切なのは忘れないことだ。そういう気持ちを忘れないことなのだ。そうして僕らはまた日常に帰ったのだった。