容疑者・室井慎次
JAFを呼んだその日のレイトショーで鑑賞。交渉人・真下正義を見ていなかったので、そういう順番を重んじる僕は一瞬躊躇したものの、物語自体にはそれほど影響はないだろうと、半分妥協して見た感じはある。最初から妥協できた理由としてはやはり監督が君塚良一になっていることだ。交渉人の方では、しっかりと本広克行になっているが、容疑者ではその名前が上がっていない。
ネタバレあり。
ただカメラワークにしても音楽の使い方にしても、「踊る」の撮影方法が確立しているために、ある意味監督が変わろうがしっかりと「踊る」を見せてくれてはいる。ただ所々で気になるところはあったし、何よりも事件に意外性がなかった。警察庁、警視庁の確執はわかる。わかるが、何故室井慎次が逮捕されなければならなかったのかはわかり辛い。何か裏側に大きなものが働いていると見せかけて、その実、何もない。おまけに室井慎次の台詞も少ないし、ただの正義漢になってしまっていて、キャリアとしての実力を見せつけたのは新城堅太郎の方だった気がする。柄本明演じる、津田弁護士にも期待していたが、結局これと言った出番無し。おまけに佐野史郎もあまり絡んでこないし、全体的にもったいない仕上がりだった。
もちろん室井慎次の過去がわかったり、彼のためにそれぞれの判断で行動する周囲だったり、ハッとする台詞もところどころにはある。パーツ、パーツは面白いのに、全体のバランスが悪いのはやはり監督の力量なのだろうか。おまけに地方に飛ばされてしまう室井慎次。キャリアが一端地方に飛ばされたら、中央に戻ってくるのは困難だろう。「正しいことのために上にいく」という信念は何処にいってしまったのか。ハガレンの大佐の様に、上手く立ち回って欲しかったものである。
