apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

恐るべき姑

 うちのことではない。電車の中で遭遇したある家族の話しである。
 休日、買物を終え帰宅しようと僕らは電車に乗った。ふと周囲を見渡すと、うちのベビーカーと同色、同タイプとまるっきり同じ物を持つ女性と、その母親らしき人が、座席を挟んだ隣の乗車口付近に立っていた。子供の年令も同じくらいだろう。あちら側も気がついた様で、「あは」と会釈をすると、突然「いくらで買ったの?」と座席に座っていた中年女性が身を乗り出して来た。
 「…?」と意味がわからず反応できずにいると、「インターネットで買ったの?」と次の質問を繰り出した。「ええ」と戸惑いながら答えると、「オークションで?安かった?」と何故か興味津々である。「オークションではなかったですよ。でも、まぁ安い方だと思います」とうちの奥さんが答えると、「あら、そう。うちはね、オークションで買ったのよ」と、あの隣の乗車口付近のベビーカーを指差した。そこで合点がいった。すると「で、いくらだったの?」とまた聞かれ、「確か、27,800円くらいでした」と言うと、その中年女性の目の色が変わった。
 「あら、うちはね、29,800円だったのよ。ダメね。うちの息子が買ったんだけれど、言ってやらなきゃ」と何やら独り言が始まった。それだけならまだしも、「綺麗なお嫁さんね」と、うちの奥さんを顎で示し、「うちのとは大違い」と、また隣の乗車口付近をチラ見し、ベビーカーを支える女性に対して「あんたもちょっとは痩せなさい」と吐き捨てた。
 幸か不幸か僕らはその直後に下車したのだが、ベビーカーを支える女性の隣に居たのは、多分彼女の母親だろう。そして座席に座っていたのは間違いなく旦那さんの母親である。嫁姑どころか、姑の独壇場なのだ。「あんたはうちの嫁なんだから」どころの価値観ではない。「世界の中心はワタシ」くらいの勢いである。もしこれが自分の家だったらと想像してみる。どう考えても起こり得ない。そうなる前に、僕が自分の母親を見切る、というか殺しかねない。考えてみればこの世の嫁姑問題の根底には、やはり親子問題があるのだろう。それも旦那側の。僕にとって血の繋がりはその事実以外には何の意味もなさない。しかもその事実も他人より少し血が濃いくらいのものでしかない。
 とにかく、たったの2,000円で、最後には「痩せなさい」とか言われる様な関係にはなりたくないものである。