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最近は写真日記。

ベロベロ@那須

 金曜日に有給を取り、泊りがけで家族旅行に出かけた。場所は那須。Jr達のことを考え、しかもアインも連れて行ける所となると行ける場所は限られてしまうのである。朝ゆっくりと出て、着いたのは13時前。那須街道を行ったり来たりして昼食場所を探すも、ここぞ那須という所がなく無難にCOCO'Sでランチ。ちなみに僕はCOCO'Sで食べたのは初めてで、それなりの楽しさはあった。
 食後、道の駅で観光場所を調べるが、どこもかしこも「冬季は土・日・祝日のみのオープン」で選択肢がない。そしてこの道の駅で起こったちょっとしたアクシデントが今回の題名の由縁であるが、それは最後に回したい。
 結局りんどう湖ファミリー牧場に向かうが駐車場はガラガラ。潰れたんじゃないのか、と思ったが既にその日は閉園していた。冬季期間故に閉園時間が早く、午後3時には入園を閉めているのだそうだ。りんどう湖を諦め、他の博物館に向かうが何処も入園料が高い割にはコンテンツが乏しそうで、車から降りることもできなかった。行き場を失った僕達家族は、早々に宿泊先であるペンションに向かったのである。
 宿泊先はペットも泊れるペンション。その名もペンション アニマーレ アネックス。玄関でアインの足を拭き、チェックイン。応対してくれたオーナー婦人が予想していたよりも若く、おまけに旦那さんは僕と同い年だという。しかも2ヶ月前に長男が産まれたばかりということで、チェックインカウンターで子供の話で盛り上がってしまった。おまけに当日の宿泊客は僕達だけだという。
 部屋はモダンとは言い難いが、シャワー室とトイレも別れており、ベッドが3つ置けるくらいの広さがあった。ゲーム機やマッサージ器具の貸出しもある。何よりペット用具が充実しており、部屋にペット用トイレや、服に毛が着いた時のためのコロコロが常備されていたり、廊下には粗そうをした時のための処理道具が一式置いてあった。また玄関と裏口にはペット用の足洗い場があり、タオルや散歩用の必需品が揃っていた。
 夕食まで時間があったので、外に出てアインの散歩をすることに。が、「晴れて温かくなるでしょう」という天気予報とは裏腹に雪が降り出していた。ペンション周辺を軽く散策し、ペンション裏に設置されている、庭程度のドッグランでアインを放す。雪が降る程の寒さでも犬と子供はお構い無しにはしゃぐ。
 夕食は流石に元シェフという腕前通り美味しかった。スープ、魚料理、肉料理と続いたが、何よりもステーキをローストビーフで包んだメインは最高だった。後から知ったのだが、オプションでステーキの食べ放題もあるらしい。食後にはもちろんデザート。パティシエだったというオーナーの奥さんが出すものだから不味いわけがないのである。
 そして料理より何より彼らオーナー夫妻の話が面白かった。「今日はありがとうございます」と厨房から出て来たオーナーはロシア人顔したイケメンで、「10年前に宇都宮で友達がナンパしたのが、今の奥さんです」と昔はやんちゃでした、という感じに仕上がっていた。10年以上ものつき合いがある2人だから息はピッタリ。お互いの性格もしっかりと把握していて、本当に仲睦まじい夫婦だった。オーナー婦人のキャラクターが僕の奥さんに似ていて、「サンドイッチ屋にパンを買いに行ったら、パンが切れたっていうから、『だったらサンドイッチ屋なんてやってんじゃねぇよ』てキレて帰って来た」という話には思わず吹いた。
 夕食後も2時間以上は話をしただろう。子供の事だったり、ペンション経営についてだったり、今に至る経緯だったり。同年代で、しかもある時期は同じ様な場所で生活をしながら現在位置はまるで違う。そんな人たちに出会える偶然が旅行の1つの醍醐味でもあるのだろう。今回のタイミングでなければ、他のお客さんがいて例え同じ宿を選んでいても、そこまで話ができなかっただろう。現に僕らがチェックアウトする日は4組のお客さんと団体客が入っていた。
 実は今回の旅行、宿泊所にかなり迷った。奥さんが選定し、その中から僕が選んだのだが、決め手はペット待遇だった。場所によってはかなり厳しく、それでもペット宿泊可と言えるのか?とクレームを付けたくなる様な所さえあったが、「ここは基本的に来るモノ拒まずだから。オウムとかフェレットとかハムスターとか、何でもあり」だったのはペンションアニマーレだけだったのである。
 アインを連れての宿泊家族旅行は今回が初めてである(僕の家族という意味で)。しかも部屋の中まで一緒というのは初体験。ベッドの上でジュニアと戯れ、夜は子供に寄り添って眠るアインを見るのは幸福の極みでもあるのだろう。アインは僕にとっては長女なのである。そして次女のルイ(猫♀)、長男のジュニアに3女のちびジュニア。全ての家族が揃って生活できるのはまだ先になるのだろうが、できる限り早くその日を実現したいと思っている。
 さて問題の題名のアクシデントを書いて終わりにしたい。
 観光案内所でパンフレットを集め車に戻ると、奥さんはJrのおむつを換えていた。流石に那須は寒いので、思いっきりドアを開けてしまってはせっかく暖まった車内が冷えきってしまう。子供達の事を考えた奥さんはパワーウインドウを開け、僕からパンフレットを受け取り、即座にウインドウを閉めにかかった。だが僕は子供の顔に気を取られ手を引くタイミングが遅れてしまったのである。容赦なく閉まるウインドウに僕の手は挟まれ、「イタイイタイイタイイタイ」と挟まれた手をもう片方の手で支えながら、声を上げてしまった。気が付いた奥さんは咄嗟にウインドウを開けようとするが、明らかに笑いを堪えている。手を抜き終わった後に、手を摩っていると「現実世界でウインドウに手を挟まれる人を初めて見た」と、涙を流しながら笑っている。おまけに周囲を見渡してみると向かいに駐車している車には人が乗っており、一部始終を見られていたようである。
「手が、手が、挟まれて、ベロベロしてた」と言ったその言葉がこの題名なのである。