apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

「紺と黄色のポロシャツ、ジーパンに白いスニーカーを履いた、3才位の男の子が、お父さんとお母さんをお待ちです」

 と本格的にはならなかったが、ジュニアが迷子になった。場所はイオンモール。僕が雑貨屋で支払いを済ませている時に、ジュニアが「ママ」と急に走り出した。ちょうどその時、奥さんはちびジュニアと一緒にテナント前のベンチで待っていたので、そこに走っていったのだと思った。が、支払いを済ませて奥さんとちびジュニアのところに行くと、ジュニアが見あたらない。「…ジュニアは?」「え…?一緒じゃ、なかったの?」そう聞いて、直ぐに店内に戻りジュニアを捜す。雑貨屋ということもあり、ラックのレイアウトに規則性がなく、おまけにジュニアの背格好だとまるで見えない。2周ほどして、店内を諦めモールに戻る。奥さんもベビーカーを押しながら「ジュニア!」と呼びながら探し歩いている。
 週末で、しかも時間帯は夕飯時。モールは混雑していた。奥さんが座っていたベンチと、ジュニアが走っていった方向を考えて、選択肢を消していく。いつものジュニアであれば大好きなトミカプラレールコーナーに行くのだろうが、僕はその逆の飲食店コーナーに向かった。走りながら最悪のことをまず考える。誘拐、転落、それらが起こり得る場所をチェックし、歩を進める。人通りが多く、また子連れファミリーが多いので、ただ「子供」を探すだけだと情報が多すぎて絞り切れない。目印は紺と黄色のラガーシャツ。確かOSHKOSH。探しながらもいつ購入したやつだっけ、とか、アウトレットで買ったんだっけ、とか思い出が蘇って来て、その分最悪の事態ばかりが強調される。
 とりあえずフロアを一周したが見当たらない。もう一周と思ったとき、紺と黄色の背中が目に入った。女性に抱っこされ、エスカレーターを降りていく。一瞬違う子かと思ったが、駆け寄るとジュニアだった。「ジュニア!」降りていくエスカレーターに向かって叫ぶと、「パパ!」とジュニアが振り向いた。何故か笑っている。「あ!パパですか!?良かった、そちらに行きます」ジュニアを抱っこしている女性が応えた。よく見ると隣りに高校生位の娘さんも一緒である。エスカレーターの反対側に行くと、ジュニアがおとなしく抱っこされて上がってきた。「ジュニア」もう一度名前を呼ぶと、「パパ」とまた応えて、しがみついて来た。「良かった。今、案内所に行こうと思ってたんです。違う女の人をママと勘違いして追っかけていたみたいで…。でもパパに会えて良かったね」そう言ってその女性はジュニアの頭をなでた。「ありがとうございます。本当申し訳ございません。」何度も頭を下げて、その場を離れる。
 「ジュニア、どこ行ってたの?」そう聞くと「ママ」と答えた。とりあえずまだ声を上げて探しているであろう奥さんのところに急いで戻る。トイレとかまで探しに行っていたらしく、ちょうどその曲がり角で奥さんと出くわした。「ジュニア!どこ行って…」最後の方は言葉にならなかった。目を真っ赤にさせながら、ジュニアを見つめる奥さん。「ママ、ごめんさい」頭に手を当てて、ぺこりとするジュニア。「ain_edもしっかり見ててよ!!」怒られる僕。「ごめんなさい」とジュニアと2人でもう一度謝った。
 ジュニアに泣いた形跡は無かった。おとなしくしていたのだろう、そう思ったが、どうやら違った様だ。その後家に帰り寝付かせると、急に「ママ!」と寝室から走って出てきて「こわい」と奥さんに抱きついて、そのまま寝てしまった。「多分、呆然としていたんじゃない?ママだと思って追いかけて、抱きついてみたら、違う顔があった。ジュニアは何が起こったのかわからなくて、呆然としてたんじゃないかな。急にママがいなくなった、そう思ったんじゃない?だから『こわい』って」そう奥さんは考えた様だ。ジュニアがどう感じたか、本当のところわからないが、多分そうなんだと思う。ママは色々な意味で偉大だと思う。迷子にさせないように、パパはもっと気をつけなければと思った出来事だった。