apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

これが腐女子か!

 「私、腐女子なんです。BLが好きです。」と新人の女性が言った。確か「どういった漫画とかアニメが好きですか?」という質問の返答だったかと思う。その場にいたスタッフ半数の頭に「???」が浮かんでいた。
 「え、本当ですか?驚きです。この職場にも似たような人は居ますが、自分から『腐女子』をアピールしたのはあなたが始めてです。」と僕は答えたが、相変わらずその場に居た人には意味不明の会話の様であった。「せめですか?うけですか?」「誘いうけが好きです」「最近は何を?」「純情ロマンチカを」「前にダヴィンチに取り上げられましたよね?」「あ、そうでしたね」と続いたが、他の人の食い付きはいまいちだった。
 女性が多い職場なので、ジャニ好きやビジュアル好きやショタ好きはいる。が、「腐女子」である事を自認したのは今回の女性だけである。他の方々はどちらかと言えば、「そういうのが好き」位に見せてはいるが、実際の所リアルメンズに対して妄想が付きまとっている様子ではある(綺麗、体毛無し、人間臭くない等)。
 当の腐女子に「結婚の予定は?」と失礼な質問を投げてみた。「来年の予定です」と即答されたので、「あ、もう決まっているんですね!おめでとうございます」と拍手をしてみた。周囲のスタッフもつられて「おめでとうございます」と拍手をしていた。「来年だともう式場とか考えてるんですね?」とつっこむと、「ええ…、でも相手はまだ見つかってないんですけれど…」と呟いた。
 周囲はドン引きだった。僕も一瞬言葉に詰まったが、負けられない闘いがそこにあった。「片思いとか?」とりあえず言葉を発してみた。「いえ、まるで当てもないんですよ…」と頬を赤らめやがった。「スピード婚、流行ってるじゃないですか?流行りに乗ろうと思ってるんですよ」と彼女は続けた。好きな芸能人は大泉洋。理想は背が高くて、細くて美形で、毛の無い人である。理想と現実を使い分ける辺、流石である。
 「1人、ぴったりな男がいますよ」僕は同じ職場の漫画志望を薦めた。「あ、本当ですか?じゃあ、頑張ってみます」躊躇はない。「ただ後4年程で魔法使いに成れる逸材なので、ご注意下さい。ちなみに腐女子さんは?」とふると、「残念ながら済みです」と当たり前の様に返された。おまけに「あ、でもツンデレ系が好きなんですよ、私。大丈夫ですかね?」と注文を付けられた。「間違いなく奴はツンデレです。見てくれとか大丈夫ですか?」「見てくれは良いんです。リアルにつき合うならやっぱり性格重視で」と真っ当な意見だった。
 腐女子を自認する人間にリアルで遭遇するのは、僕にとって初体験である。「らしい」人間はいくらでもいるが、自己哲学を持っている人間は初である。何より自認する程の人間なので、リアルもしっかりと心得ていて、業務上のコミュニケーションも問題ない。研修レポートでも「今後期待できる」と言われる程、全体的なバランスも良いのである。
 「来週の金曜日なんですけれど、残業ありますか?」「いや、大丈夫だと思いますけれど、急ぎの用事なら休みますか?」彼女は少し照れくさそうに「合コンなんです…」と言った。「しかも秋葉で19:00から。あ、でも少し遅れるくらいなら大丈夫なんで、どれくらいに終わりそうですかね…?」「結婚がかかっています。仕事は好きにして下さい」そう言うと、定時で上がれれば問題はないから、と彼女は帰って行ったのだった。
 次の日、彼女のあだ名が「いいんちょ」に決まったのだが、「え?ツインテールじゃないのに、良いんですか?」としっかり対応してくれる辺り、やはりプロだと思った。