シガテラ：古谷実

　行け！稲中卓球部にグリーンヒル、僕といっしょときて、ヒミズ。ヒミズまでは1話完結の笑いだけの漫画だったが、ヒミズからは路線変更。前は長編が書けない、もしくは構成力がないと思っていたが、シガテラではしっかりと考えて作っているようだ。お笑いは相変わらず。画でも台詞でも流れでも笑わせてくれる。
　シガテラのメインストーリーは、電車男とエルメス女と同系列の話しで、ほぼいじめられキャラの男子学生が、可愛い女子学生に惚れられ、つきあいから何から女性にリードされていく。エルメス女同様、そんな女性はいないだろうてなくらい、性格の良い女性が出てくるのだ。つまり純愛と笑いがメインになる。
　しかしそれだけで終わらないのが最近の古谷実。ヒミズで見せた不道徳がシガテラでも登場する。要するに日常的な悪意なのだけれど、これは本当にリアルだ。デスノートの裏側に流れる正統的な悪意よりも、このシガテラに流れる悪意はより怨霊的だ。
　純愛＋笑い＋悪意がシガテラ。2巻の帯は「すべてが紙一重」。まさにそのとおり。これは帰国して直ぐに読んだのだけれど、近々3巻が出るらしいのでその前にアップ。

「想定外の急発進！！トロイ奴など待ってはくれない恐るべき資本主義のハードな一面」
古谷実「シガテラ」１

「見てろよバカ共……国より怖い本当の正義を見せてやる」
古谷実「シガテラ」２
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4063612260/qid=1092068877/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-0546639-5241817