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最近は写真日記。

趣味で良いんで

 「カメラとか小説とか書きたいんですよ。趣味で良いんで」と20歳前後の男子に言われた。「賞に出して佳作とかでも取れれば良いんで」と言う。似たようなことを言っていた男子を思い出した。彼は「いや、大学で働きたいんだけれど、うーん、非常勤講師くらいで良いかな」と名言を残していた。
 今は亡きにゃんにゃんチャーくん。彼が帰国する最後の夜のこと。「何か残す言葉はありませんか?」と遺言を聞いたところ、「そうですね、特に語学留学者に言えることなんですが、もっと他にやり方はあるだろうと思います。例えば僕みたいにサッカーをプレイしに来ている人間は、それこそサッカーのことばかり考えてます。それはain_edさんも同じでしょう。でも語学留学に来てる子たちって、どうでしょうかね。切羽詰まってないっていうか」と少し憤りを隠せない様子だった。故にゃんにゃんチャーくんの貴重な言葉である。
 最近イタリアの国立大学入学の質問を良く受ける。コメントに登場してくれるAKIRAくんもその1人なのだが、ここ数日で彼の人生プランは激変した様に思われる。その他にも大学入学を希望する学生は幾人かいて、話しを聞くのだが、その度に「……。」とコメントに詰まることはしばしばある。
 「趣味は何ですか?」と聞かれれば、僕は「アニメ・漫画・ゲーム・PC・バスケ」と答えるだろう。アニメは見られれば良いし、漫画は読めれば良い。ゲームはできれば良いし、PCも遊べればそれで良い。バスケは時々シューティングができればそれで満足である。そのどれかで稼ごうとは思っていないが、仮性オタクにはまず負ける気がしない。具体的な例を出せばゲーマーと自称している人々。放課後ゲーセンに立ち寄るだけの学生に、簡単に負けていてはゲーマーとは言えまい。
 趣味で「〜をやりたい」と言っても、そのカテゴリーに本気に取り組んでいる人々は沢山いる訳で、その中で「賞を取りたい」とか「非常勤で良い」というのはあまりにも失礼だろう。もちろん覚悟して取り組んで、その照れ隠しとして「趣味で」と言うのはわかるが、あきらかに「どれかで賞が取れたら、それで」という距離でやられると、やはりあまり良い気分はしない。
 僕の場合、ペルージャ外国人大学に通ったのはたったの半年だったが、半年間で自分がやれることは全てやった。大学留学を見据えた語学留学であり、語学留学がメインでは無かったが、語学留学で来ている学生達が僕よりも成績が悪いことには驚いた。最初の3ヶ月が終了し、新しいコースに入った時、日本の外語大でイタリア語を3年間学んできた学生に会った。「このクラスに居るってことは、結構イタリア生活長いんですか?」と言うので、「いえ、3ヶ月だけですよ」と答えると、「ああ、じゃあ日本でやってきたんですか?」と聞く。「いいえ、CiaoとBuon Giornoくらいです」「…。え?このクラスってそんなに簡単なんですか?クラス変えてもらおうかなぁ」等と言っていたが、授業が始まれば「全然、わからない」と成るのである。
 「語学留学です」というからには、圧倒的な語学力を見せて欲しい。少なくとも僕が「語学留学」をしていた半年に比べて、「凄いな」と思える程の結果があってもおかしくはない。イタリアの国立大学に入るのであれば、外国人大学の語学コースのテストくらいは文句無しの点数で通って欲しい。もちろんこの逆もある。本気で取り組んでいる以上、趣味の人間に負ける様では、どうしようも無いだろう。
 現実問題として才能と努力というものがあるが、そのステージまで上がっていないのだ。現チチクリチャーくんは、「プレイヤーでできる間は、それだけ考えます」と本気である。才能や努力を言い訳にしないで、彼は「サッカーのことだけ」を考えている。そういった姿勢が、僕は好きなのである。