無限の住人 16巻:沙村広明
無限の住人の16巻をやっと購入。古本で。実はなるたるもEDENも新刊を買えていない。なるたるに至ってはすでに完結しているらしい。16巻はほぼ人体実験ばかりで、とにかく切られまくり、死にまくり。不死の身体であるために人体実験されるのは使い古された手だが、最近の円朽葉:ヒトクイマジカル:西尾維新を思い出した。確かに不老不死の身体があったら、医学は飛躍的に進歩するんだろう。でも死なないことって意味があるのか?繁殖ができるのであれば意味があるのだろうけれど。
久しぶりに登場の天津影久。渋い台詞だけで終わってしまったが、16巻の見せ場だ。
「本来、男が夢だの野望だのを口にするからには、自身1代ー本人のみの代で完遂する覚悟を当然持って、しかるべきもの。子に託せばいいなどとは沙汰*1の限り。それは最初から己の器量に余る夢であったのだと省みるべきでしょう。そうであっても、一旦親より託されれば、全霊を注がざるを得なくなるのが子という立場。引き返せるを引き返さず。事の善悪、自分の器……考えず。果たし遂せた先に何があるのか……考えず。そうでなかった時の自分の人生……夢想だにせず。ただ盲進……。親と子の関係にはそれだけの力がある。その力に対して責を負うという事だと思います、子を持つという事は。後人に悲願を押しつけて先に逝くような愚かをせず、まず自らを一廉とし、有形にせよ、無形にせよ、子孫に残すべき何某かを手中にできれば、その時初めて跡を継がせる者の事を思ってみるかも知れませんね」沙村広明「無限の住人」16巻
もうほとんど天津の独白になっているのだが、今までの流れを考えれば彼の苦悩が伺える。子供を育てるということが、蔑ろになっている日本では良く響く言葉だ。ペットと共に暮らすにせよ、子供を育てるにせよ、ペットが飼い主に似るように、子供もまた親に似るという皮肉がこの先、現実のものにならなければ良いと憂えてみたり。
漫画の話しばかりで恐縮です。
*1:もっての他