apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

ホストになってみよう:その11

 僕たちのグループを指導してくれるのは先輩ホスト:カガミさん(仮名)で一番綺麗な顔をしている人だった。「綺麗な」というのは人それぞれなのだろうが、目鼻立ちがはっきりしていて、濃い顔の代表みたいな人だった。平井堅をもう少し、白人寄りにした感じだろうか。一見近寄り難いのだが、体育会系なのか、ハキハキしていて、動作も機敏だった。後々知ったのだが、ホストをやるまではホテルマンだったとか。どうりでスーツの着こなしから、動作まで無駄が無かった訳だ。
 「じゃ、とりあえず席に着いて」と、言われた通り、「失礼します」と断ってからカガミさんの対面に座る。僕の後ろに居た子が、水の入ったJINROボトルとグラス、それとアイスペール*1にマドラーを運んで来た。
 「普段焼酎とか飲む?ここのお客さんも、基本的には焼酎だから、作り方だけ憶えておいてね」とグラスに氷を入れていく。「氷はまず最初に入れてね。何故だかわかる?」氷を移動しながら、カガミさんは一瞬僕の方を見た。「え?最初に液体が入ってると、氷を入れた時に、跳ねたりたりするからですか?」と答えると、カガミさんは頷きながら「うん。そうだね。だから最初に氷を入れるの。でも、もし飲んでいる時に氷が溶けてしまったら、手をかざしてあげて、ドリンクが跳ねない様にして」とグラスに手をかざした。
 「焼酎だけど、良く2フィンガーって言うでしょ?大体グラスの下から2本指分まで焼酎を入れて割れば良いから」と、氷の入ったグラスに水を入れ、一度そこで止める。「で、後は割りたいものを注いで上げるだけ。わかった?やってみようか」と、何も入ってないグラスを差し出される。教えられた通り、グラスに氷を入れ、水を入れようとボトルを傾ける。
 グラスに水を入れようとした時に、チンッとグラスにボトルの先端が当たった。「そうそう、気にしない人もいるけれど、そこは音立てない方がスマートだよね。もう一度やってみようか」とリピート。次は音を立てずに水を注げた。言われた位置で一度止め、最後まで注ぐ。「うん、良いね。そしたら、これね、この棒で掻き混ぜて」とマドラーを渡される。「普通に掻き混ぜて良いんですか?」とカガミさんを見上げると、「まぁ、普通って言ってもさ、既に君はお客様の目の前に居るわけだから、ホストらしく。様に成る様に掻き混ぜてね」と見本を見せられる。普段お酒など飲まない僕は、マドラーなど使ったことが無い。掻き混ぜなければいけない飲み物など、カルピスくらいしか思いつかなかった。「まぁ、良いかな。君は、大丈夫だよ」と早々に次の人にバトンタッチ。何が大丈夫なのか、僕にはわからなかった。
 20分程で一周して、「それじゃ、明日の6時くらいには集まってもらおうか」と専務から解散の合図。ジョーと最寄りの駅まで「明日ってどんなかなぁ?」などと話しながら歩いた。

*1:氷入れだが、この店では違う呼び方をしていた気がする