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最近は写真日記。

東京で独り暮らし…

 僕は日本では独り暮らしをしたことが無い。高校も大学も自宅から通える距離だったので、独り暮らしをする必要性が無かったのだ。オーストラリアに居る時は9ヶ月はホームステイで、3ヶ月ほど部屋を借りた。それが初めての独り暮らしだったろう。大学に入ってから「独り暮らしは良いよ?」と上京して来た学生達は言っていたが、僕にはあまりメリットが浮かばなかった。
 僕の周囲の人間は東京生まれ、東京育ちが多く、例えば竹下通りが通学路という子もいた。そういう子は高校や大学に入っても家庭に問題が無い限り、独り暮らしをする必要性が無い。就職をしても、仕事先が東京であれば、部屋を探すよりは自宅から通った方が効率的である。
 ここで問題に成るのは、「親元から離れるか離れないか」ではなくて、「自分が生まれ育った環境から離れられるか離れられないか」だろう。地方から上京して来る場合は、目的地がはっきりしている分、気持ちを整理し易いだろう。否が応でも、新しい環境に慣れていかなければ成らない。しかし東京で生まれ育ち、親元から離れ独り暮らしをしたとしても、自分が生まれ育った環境から離れる必要性が無い以上、その環境と繋がりながら生活することに成る。
 例えば原宿で生まれ育った子が、独り暮らしを初めて、仕事先が渋谷だった場合。親元を離れてはいるが、環境にはそれほど変化が無い。地元の友達も居れば、それまでのコミュニティとの距離感にもさほど変化が無いだろう。子供の頃から通っていたショップやゲーセン、コンビニ、本屋や公園など、原風景のままである。変化させる必要性が無いのだからしょうがない。
 そのまま独り暮らしを一生続けていければ良いが、異性と同棲すると成った場合、問題がありそうではある*1。例えばその異性が地方出身者であって、仕事先が東京だった場合。同棲することを前提に考えた場合、東京育ちの子は、自分の育った環境から敢えて外れることができるのだろうか。上記の例で言えば、自分の仕事先が渋谷で、異性の仕事先が新橋だったら、その中間か、どちらかの仕事先に近い方に住むことになるのだろう。
 すると確かに自分の生まれ育った環境からは、少し離れて暮らすことには成るが、仕事先が渋谷である以上、やはりそれまでのコミュニティとの関係は続き、そのコミュニティに異性を巻き込む形になるのではなかろうか。もちろんその異性が同意して、自分の生まれ育った環境、コミュニティに入ってくるのであれば何の問題も無いが、相手にも同様のコミュニティがあると考えると、あまりフェアでは無い気がする。結婚と成ればまた状況は違ってくるのであろうが、そこに辿り着くまでには色々と面倒なことがありそうである*2
 視野を少し広げて見る。例えば僕の友人の日本人は台湾人に恋をしている。2人の恋愛が上手くいった場合、どちらの国を選ぶのだろう。選び切れずに、2人が出会ったイタリアで暮らすのだろうか。イタリアで暮らすにしても、それぞれに日本人コミュニティ、台湾人コミュニティに参加しており、どちらに比重を置くのか。
 東京で自分が独り暮らしをしようと考えた時に、いつもそういった事を考える。親元、生まれ育った環境云々を抜きに考えても、自分の住む土地が地理的にも住みやすく、交通の便が良かった場合。日々に必要なものがその土地で全て揃ってしまう場合に、僕は敢えて他の土地を選ぶことができるのだろうか。

*1:結婚では無くて同棲する場合

*2:同棲することが結婚への前提という意味ではない