apoPTOSIS:mod.HB

最近は写真日記。

2つの結婚式と結婚写真

 9月、10月と友人の結婚式が2つ続いた。1つ目の結婚式はイタリアで出会ったカップルで以前紹介したことがある。現在の彼らの住まいは長野県飯田市なのだが、式は松本で挙げるということで泊りがけで参加した。車で向かったのだが、ちょうど3連休の中日ということもあって、渋滞に巻き込まれ一時は間に合わないかとも思った。というのも披露宴、一発目の祝辞を頼まれており、彼らのためにも遅れるわけにはいかなかった。結果的には開場1時間前にホテルに到着し、式には間に合った。新郎の実家は地方テレビで紹介される様な洋菓子屋さんで、新郎で3代目となる。1代目もまだ健在で、親戚が多く集まった式という印象が強い。会場はガーデンヒルズ迎賓館という所で、式場の隣にはチャペルも併設されており、夏であればプールに飛び込む輩も出そうな場所である。
 チャペルで行われた結婚式は人前式で、晴れやかな2人を見ていて思わず涙ぐんでしまった。僕らは仕組まれた披露宴はやらされたが、僕ら自身では式を挙げていない。また家族参加での友人結婚式は始めてのことで、もし自分達が式を挙げたら、と想像が膨らみ過ぎたのも原因かもしれない。ただ2人とも以前とは違った、真に幸せそうな顔をしていたことには違いない。
 披露宴が始まり司会の挨拶の直後に祝辞を述べた。一発目ということもあり、流石に緊張して声が震えてしまう場面もあったが、滞りなく終えた。祝辞自体は前日に考えたもので、当たり障りない内容だったかと思う。「結婚生活を続けて行く秘訣は感謝を忘れないことです。お互いに「ありがとう」という言葉を忘れないで下さい。新郎がゴミを出したり、新婦が料理をしたり、当たり前と思わず、「ありがとう」と声に出してあげて下さい。そして何より、こうして2人が本日良き日を迎えられたのは、ご両家の皆様からの絶えまない恩恵があったからこそだということを忘れないで下さい」と本当に一般的な挨拶だったと思う。後々に新郎の父親から「温かい言葉をありがとうございました」と声をかけられた。
 10月は、バスケ部(高校)のチームメイトの結婚式(披露宴のみ)だった。式場は目白にある日立目白クラブで、風格ある場所での披露宴だった。お相手は勤め先の社長秘書。同席したチームメイトと「絶対に机の下だな、社長秘書だし」と卑猥な話で盛り上がったり、現在それぞれがどういう生活をしているか、例えば家を購入したとか、仕事と収入とか、これからの目標とか、そんな話題に始終した。根本的にそういう話題に対してあまり得意ではないが、思い出話に始終しなかっただけ救いではあった。
 以前書いたことがあったが、「一期一会の連続こそが、僕の求める関係性であって、思い出の共有に価値はない。」と思っている。懐かしい人に会ったからといって、思い出の共有を確認しあって、追憶の日々から今を認識したいとは思えないのだ。つまりはその時、そうして出会えた時の彼らが重要であって、思い出は結局の所、自分を含めた過去の美化された結果しかないのだ。

ノスタルジアとは過去を美化しようとする情熱であり、そのかぎりにおいて歴史と敵対する関係にある。歴史家は過去から現在へと連なる因果関係を探求し、それを客観的に証明してくれる資料を重用視する。だがノスタルジアに耽るものは、堕落と幻滅に満ちた現在を忌避し、現在とのまったき断絶の上に立って、美しかりき過去の映像に酔い痴れる。夢見られた過去とは絶対の距離のもとに隔てられたものであって、それゆえに光輝くものと化すのだ

 四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書より
 イタリアで出会った2人は現地では現地の雰囲気を、日本では日本に適した雰囲気を醸し出していた。抽象的ではあるけれど、イタリアではゆったりと、日本ではきびきびという感じである。たったの何ヶ月間で人の雰囲気はそこまで変化するのかと驚きはあったが、どちらの顔の2人も魅力的であることは確かである。
 高校時代の友人は、結婚式は挙げたにも関わらず数年間は仕事の関係上単身赴任で、いきなり離ればなれという話だったが、最後の2人の挨拶を聞いていて覚悟の上だということが伺えた。高校時代、あまりコミュニケーションが得意ではなかった友人が、営業経験を経て、人前で自信満々に話をする姿が印象的ではあった。またその自信の通り、話の内容もしっかりとしたもので、どこでそういった技術を身につけたのか、素直に羨ましくも思えた。
 今後も結婚式にお呼ばれすることが多くなるのだろう。自分がそんな年齢になったのか、ただ単にそういうタイミングなのか。自分が結婚する前は、他人の結婚式はただ参加して楽しむだけのものだと思っていたが、自分が結婚してみてわかる感慨深さというものがあって、また1つ自分が結婚したことによって外れたブラインドがあることに気がついた。
 2つの結婚式に感化されてか、僕ら夫婦もブライダル写真を撮った。準備(着付け・化粧等)から終了まで4時間程度かかったが、ウエディングドレスを着た奥さんを見られただけでもそれだけの価値があったと思う。子供達2人も衣装を着て、一緒に家族写真も撮った。また最後には花束まで用意されていて、「結婚おめでとうございます」とスタッフの方々から拍手を頂いた。2人の子連れながら、新婚夫婦扱いされたのは何だか微笑ましくもあり、嬉しくもあった。結婚式を行うと、そういう風に祝福されるのかと思うと、式を挙げるだけの価値と意味が今さらながらにわかった気がしたのだ。