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最近は写真日記。

何のために生きているのか、と問われたら?

 「死」id:ain_ed:20041029についてのお話しが出たでので、「生」についても少し。
 西尾維新の戯れ言シリーズ、クビキリサイクルにて、「じゃあ、あんたは何のために生きてんのよ?」*1という問いに、主人公いーちゃんはこう答える。
「念のために」
 このクビキリサイクル西尾維新のデビュー作であるが、2002年デビュー当時で彼は20歳。作品投稿は18歳前後からだという。メフィスト座談会にも話題が出ていたが、クビキリサイクルの元になった作品は19歳の頃のものだろう。確か「並んで歩く」という名前だったか。別に年齢に拘る気は無いが、「念のために」という発想に思わず頷いてしまった。
 僕の場合、「日本人の生」というものに対しての考え方はかなりシビアである。何故「日本人」に拘るのかは、アインデンティティがどうのとか、地球人がどうのとかまで話しが飛ぶので棚上げに。とりあえずそこで指す「生」は、多分一般的には受け入れられない。
 日本はGDPで第2位を保持できる程の先進国である。文化的にとか経済的にという問題ではなくて、地球規模で見た時の生活水準は上位クラスであるし、景気不景気と騒いだところで、最低限の生活は営むことができる。
 先進国とは地球人全体を指して、比較的に進歩しているからこその先進国だ。後進国、もしくは発展途上国は自分たちの生活に比較的必死である。彼らは彼らの生活を守る暮らしをすれば良い。それが自ずと国の発展に繋がるだろう。逆に先進国であれば、地球人の中で進歩した集団である以上、自分の暮らしのみならず地球全体のことを考える視野が必要になってくる。
 僕が大学入学前に古書店で一目ぼれした作品。初版本で箱に入れられた五木寛之のガウディの夏。その箱全面に書かれた本文。僕はそれだけでガウディの夏を購入した。と言っても値段は500円程だったし、箱に書かれた本文が欲しかっただけで、作品自体はまだ一度も読んでいない。
 「都市も街もあのビルも、何も生きちゃいない。ただそこに存在しているだけです。人間にしてもそうだ。あなたは本当に生きている人間を見たことがありますか?生きているという意味を理解していますか?あの女もそうだ。彼女は自殺したんではない。彼女が自殺しようと思い立った、その意思が彼女の生だったんだ。彼女が自殺をしようと思ったその瞬間、彼女は始めて生きたことになる。僕らは彼女を死に追いやったのではなくて、生かしてやったんだ」
 という感じだったか。これが本箱全面に印刷されている。原本が手元に無く、うろ覚えなので言葉はまるで違うと思うが、僕が当時感じ取ったことは以上の様なことだった。そしてそれは、僕が当時考えていたことを上手く表現している文章だった。
 生活することは先進国民にとっては生ではない。それ以上の視野を以て行動することが生だと考えている。そういった意味で、日本はまだ未熟だ。こういった考えは日本では絶対的に受け入れ難いだろう。
 その反面、そこに義務や責任を感じていない。ただ先進国内においてよりより生を営もうと思うのであれば、必然的に地球レベルの視野が伴ってくる。専門性が無くても日々の生活において、地球全体に関わってくる問題が多い。例え自分では「うーん、地球とか実際どうでも良くね?やりたい様に生きれば、いいんじゃねぇの?」と言ってみたところで、「本当にやりたい様に」先進国内で生きることができたら、それは十分に何かに貢献しているはずだ。
 しかしそれでも、「いやー、本当にどうでも良いんだって。ぶっちゃけ、自分が気持ち良ければ何でも良いの。でもさぁ、実際面倒じゃん。そういうのって。何てぇの、いつ死んでもおかしくないでしょう?だったら、何もしなくたって死ぬわけで。かといって積極的に何かをするのも、ねぇ?まぁ、ほら、生きられる間は生きておこうよ、みたいな」と成った時。「念のために」という言葉が全てを代弁してくれる。
 そして僕が考古学を続けるのは、別段「地球のために」何て思いが先行しているわけでもないし、そこに使命感もない。自分が気持ち良いから続けるわけである。だから今でもノラリクラリとやっているわけで、それも「念のために」という言葉に置き換えられる。
 話題が「生」なんてものだから、結局混沌としている。混沌としている以上、「矛盾してない、それ?」となるが、それを上手く説明できる、抽象的な言葉が「念のために」。西尾維新がどういう感覚でその言葉を用いたのかはわからないが、「何のために生きているのか?」という問いに対しては、これ以上ない答えに思える。

クビキリサイクル?青色サヴァンと戯言遣い
西尾 維新

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*1:本が無いので、正確な文章を憶えていないが、似た様な質問だった