「何人ですか？」

　日本文化週間のちょっとした打ち上げで、日本人の交換留学生に質問された。彼らが来たのは４月からだったので、６月末に帰ってしまった僕とはあまり接点が無かったのだ。
「あのう、前からずっと聞きたかったんですけれど」
「はい？何ですか？」
「本当に日本人ですか？」
「はい…？」
「いや、どっかのハーフかと思って」
　ハーフですか？と言われることは前から良くあった。問題は何処とのハーフか？である。
「えっと、何処のハーフだと思います？イラク？ネパール？タイとか？インドネシアはないか」
　と聞くと、
「うーん。何処ですかねぇ。どっちかって言うとアジア寄りかも。タイ？かな」
　と言われた。
　中学の頃は白人とのハーフ？とも言われたが、大学の頃からアジア色が強くなったのか、イラクとか？と言われる様になった。インドに行った時には、インド人に、
「違うよ。君は日本人じゃない。ネパールでしょ。絶対に、君の先祖はネパールだ」
　と断定された。
　他の日本人の交換留学生がまた質問する。
「いや、日本人顔ですよね？でも、南国の方。鹿児島とか沖縄とか。うん、沖縄顔だ」
　と言うが、僕の家系は思いっきり関東である。父にしても母にしても、年こそ１０歳離れているが、出た小学校は同地区である。果物屋も父の代まで代々受け継がれて来たものである。なので、間違いなく関東、しかも神奈川県出身なのだ。
「誰かに似ているって良く言われませんか？」
　という質問を良く受けるが、
「どちらかと言うと父に似ていると言われます」
　と返す様にしている。それ以外の答えはわかり切っているので、言いたくない。もちろんその質問も他の学生から受けたのだ。
　また、他の学生が思い出した様に笑い出した。何？と聞くと、そう言えば前にこんなことを大声で話してましたよね？と笑いを堪えながら、
「『おっぱいに成りたい』ってバールで大声で話してたのを聞いたことがあります。私にとってはあれが初対面だったのですが、最低な人なんだと思ってました」
　と暴露された。友人と話しをしている時の僕の声は、多分人一倍大きい。なので下品な話しをしていても、隣に丸聞こえだったりするので、一緒にいる友人はいつも恥ずかしい思いをするのだ。何よりも僕には下品な話しをしているつもりがないから、まるでオヤジも良いところである。人種を疑われた上に、「最低」と言われたからには、黙ってはいられないので、
「うん、そうだね。今でもおっぱいに成りたいかも。夢だよね。出来れば右乳が好み」
　と返してみたものの、年齢的に多分そういう会話は慎むものなんだろうと感じた。今の日本だったらセクハラで訴えられる可能性は大である。危険だ。