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最近は写真日記。

10代の時に読みたい「マンガ」

 僕が漫画を読み始めたのは比較的遅い方だ。小学校2、3年からコロコロやボンボンを買い出したが、周囲の子たちは既に少年ジャンプを手にしていた。逆に僕がジャンプを定期的に購読していたのは、中学3年間で、それ以外はコミック中心である。
 シブ経ティーンズラボでは「現実的な恋愛ストーリーが人気の秘訣!?」としているが、僕は少女漫画は好きだが恋愛漫画は苦手である。先日の日本文化週間の打ち上げ時にも、日本に留学していたイタリア人が「あの、二つの名前がある、韓国人のドラマ。みんな、見てたね。名前なんて、言う?(イタリア語訛りの日本語で)」と尋ねるので、冬のソナタでしょう?というと、「そうです。それです。出てる人の名前何て言いましたか?名前が、二つあります(イタリア語訛りの日本語で)」と聞く。「ペさん、か、ヨンさま、じゃない?(笑)」と返したが、真顔で「違います、ドラマの中です」と返された。数人の日本人学生の中で、1人だけ冬のソナタを見ていた学生がいたので、質問に答えていた。それにしても、僕がペ・ヨンジュンを美しく思えないのは、多分イタリア人が2046の中のキムタクを見て「で、あの日本人は何?」という感覚と同じだろうか。純愛とキャラ萌え。それがどうやら漫画市場にも波及している。
 本当は漫画市場がキャラ萌えの本拠になるはずだが、最近の傾向を見ていると漫画市場が後追いをしている様にしか思えない。「電車男エルメス女」id:ain_ed:20040605でも書いたが、少年・少女漫画というカテゴライズよりも、純愛漫画とでも別枠を作った方が良いだろう。
 僕の場合、10代前半はロードス島戦記に代表されるテーブルトークRPGを基本としたライトノベルを好んだ。漫画もファンタジー系が多く、ジャンプ漫画も恋愛モノより冒険モノが多かった。中学1年の時に読んだマスター・キートンは忘れられない。当時まだ考古学という学問の範囲さえ把握していなかった僕には、丁度良い漫画だった。中学3年次には風の谷のナウシカの最終巻が発売されて、あの時の衝撃を未だに引きずっている。
 高校では少女漫画を読み始め、大島弓子萩尾望都、そして何よりも吉野朔実との出会いは、思春期において様々な問題を提示してくれた。そういう意味では、僕がキャラ萌えを卒業したのはマスター・キートンを読んでからだろう。浦沢直樹の作品はキートンを通して、色々と読んだが、YAWARA!やHappy!では楽しめず、パイナップルARMYなどの方が好みだった。MONSTERはもちろん素晴らしいが、作品作りの根本はやはりキートンにあるのだろう。
 もし僕が10代後半に漫画を薦めるとしたら、風の谷のナウシカ(原作):宮崎駿、少年は荒野をめざす:吉野朔実綿の国星大島弓子AKIRA大友克洋寄生獣岩明均。それ以外にもスラムダンクやピンポン、ばら色の明日、すすきのみみずくなんかは高校生の時には読んでおきたいかもしれない。
 世界の中心で、愛をさけぶ以降の純愛人気と、物語を無視したキャラ萌え。シブ経に依れば漫画は手軽に楽しめる娯楽という風に、10代に捉えられているらしいが、いい加減漫画のカテゴリーを構成し直すべきだ。でなければ大量消費の後に残る作品の質が落ちることになる。漫画大国と日本は呼ばれているが、漫画を作品として評価できる人間が多いかどうかで言えば、それは疑問である。漫画だけでなく、アニメや映画、文学にしても、どうも首を傾げることばかりだ。安いお金を出して、純愛作品を見て泣き、感動する。漫画やアニメ好きを「仮想と現実の区別がつかない」と言うが、人生を以て現実を体験していれば、敢えて純愛作品に「泣く」ことはあっても、作者の意図通りに「泣かされる」ことはごく僅かだろう。世界の中心で、愛をさけぶで泣ければ、ロミオとジュリエットで泣けても良いはずなのだ。

シブ経ティーンズラボ:現実的な恋愛ストーリーが人気の秘訣!?10代はこんな「マンガ」を読んでいる
http://www.shibukei.com/teenslab/2004/11/12/