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最近は写真日記。

strawberry shortcakes:魚喃キリコ

 帰国して、とりあえずブックオフで購入した漫画はいくえみ綾の「潔く柔く」だったのだけれど、あまり面白くなくて、本棚にしまう時に目に付いたstrawberry shortcakes(以下st sc)を読み直した。
 魚喃キリコの漫画で一番印象が強いのは南瓜とマヨネーズだけれど、兎に角、駄目男を彼氏に持つ女性が主人公というパターンが多い。Water.とか痛々しいラブとかもパターン的には同じである。ただst scで違うのは、駄目男を彼氏に持つ女性は出て来ず、過去に駄目男を彼氏に持っていた女性が出てくる。これは魚喃キリコ本人の成長のためなのか、それとも本人の現実とリンクしているからなのかはわからないが、以下のモノローグは少し意味あり気である。

まんまとだまされてたあたしも、バカすぎて笑える。
その男の夢は、映画とか役者とか監督で、あたしとそいつが出会った時はまだ、あたしもイラストレーターを目指してがんばっていた頃で。
あたしの夢がかなって、それでかせいだお金には、普通に生活するにはかなりのヨユウがあって。
だからあたしは、そのお金をそのひとの夢にたくしたんだ。

ーアイツにそんなことができるんだ。
そんな普通で当たり前なやり方で、女の人を幸せにできるんだ。
だったらどうして、あたしにはそれを見せてくれなかったの?
あたしを踏み台にして、置き去りにして、アイツがあたしとは別の世界で幸せになる。あたしを忘れて、アイツが幸せになる。
あんたが死ぬほど苦しんでくれたら、あたしはこんなに傷ついたりしなくて済むのに。
ーでも唯一の救い。あんたの本当の夢は、叶わなかったんだねー…
自分の醜い感情にゾッとする。

 st scでは4人の女性の視点で物語が進んでいく。1人は上述したイラストレーター。1人はそのイラストレーターと共に生活する友人女性。彼女は居場所を求めて田舎から上京してきた。キャラとしては、特に自己保身に優れた女性である。男性に誘われるままに、そして自分の寂しさを紛らわす為に男性を利用する。

こんなふうにしてしまうのは、あたしが悪いんじゃない。
誕生日に誰かに抱き締めてもらいたいだけだもん。
誰かにあたしがいなくちゃイヤだって言ってもらいたいだけなんだもん。
携帯電話の電源は切ってしまった。彼氏は連絡のとれないあたしのことを、心配したらいいと思った。
合コンで会ったそのひとは1対1で話してみると、さほど楽しいひとではなかった。
でも、ひとりでいるよりはずっといい。

 僕が一番苦手なタイプである。こういう女性にだけはこれからできる限り関わりたくない。
 もう1人の女性は、「恋がしたい」と連発しながらも、言い寄って来る男性にはまるで見向きもしない。何処か飄々としていて、「恋がしたい」と言いながらも、どこか恋愛をバカにしている、そういうタイプである。

テレビのニュースで世界は大変。昨日と同じでいることがなんと幸せなことか。
それはわかっている。でもね、あたしはたださァ、なんてことはないくだらない出来事を、セミの声が小さくなったね、とか、東京でもそこらへんにススキは生えるのだね、とか、そういうことを誰かに隣で聞いてほしいなァって。そう思うだけ。
平和な今もありがたいけど、そのくだらない平和を共感できる相手が欲しいだけ。
ー”大好きなひと。”
ダーリンッ
そう!あんただよ。あたし、あんたを待ってるのッ。あたしはあんたのことが、大好きだッ(幻覚)。
…寝るとしますかナ。

 この女性がイメージしている「恋」は、僕にはわかりやすくて、僕の純愛のイメージに近い。

天空から10tのエメラルドが目の前に降ってきて、行くてをはばまれてしまったような、そんな恋がしたい。
それは突然やってきて、あたしをいっぱいにするんだ。
いつかくる。いつか必ず、それはくる。

 だからこそ、そう思えない相手はフリ続けるのである。自分の日常を乱すことが無いような相手では物足りないのだ。そしてその「いつか」が来る日は、限りなく0に近いのだろうけれど。
 最後の1人は、叶わない恋と知りながら、それでもずっと片思いを続ける女性。キャバで働いたり、体を売ったりしながらも、恋する相手に電話する時は躊躇してしまう。世界はもう、自分と相手しか存在しないかの様な、そういう想いである。

菊池に会ったのは4週間前。その日から今日まで、べつに菊池から連絡はないし、あたしもしてないし。だけど菊池はその4週間の中で、たまにはあたしのことを思い出したりしているだろうか。それともあたしのことなんかちっとも忘れて生活しているのかも。
セックスしながら、あたしは頭ン中でそればっかり考えている。

 菊池くんは駄目男っぷりはそこまで露呈していないのだけれど、やはり少し優柔不断。ご飯驕ってもらったり、差し入れもらったり。

「知ってたけど…、恋愛感情では何も返せないことが、オレも苦しかった。けどオレおまえにはずっといてほしいと思ってて、友達としていつまでもおまえが残っててくれたら、いいのにって思ってて…。勝手なのかもしんないけど、はやくおまえがそうゆうこと切り出して、オレがおまえにちゃんとこうゆうことを」
「ねぇ菊池。菊池、あたしが死んだら泣く?」
「…はっ、バカじゃねーの?なァに言ってん…、なにを言って…。…うん」
「あんたが泣いてくれるんだったら、あたしいくらでも生きれる。ありがとう菊池」

 男女間で、どちらか一方に感情があった場合、もう一方的には「友達だから」とは言えないだろう。自分が思っていても、相手はそう思っていない。どんな形であれ、関係を続けることは、結果的に相手の気持ちに答えていることになる。つまりは体の関係がなくても、関係としてのギブアンドテイクは成立している。そしてどこかでそれはお互いの関係に影響を与えることになる。ちなみに菊池くんには彼女がいるので、菊池くんがこの女性の様に、彼女を「死ぬほど好き」なのであれば、その彼女以外目に入らないはずなのである。ちなみにこの2人は1度セックスしてるわけだけれど。物語が続いていたら、菊池くんはやはり彼女に捨てられる運命なのだろうか。そう考えるとやはり駄目男だ。

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