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最近は写真日記。

折り紙コーナー3日目、よりも居合道

 実は先日、折り紙コーナーで帰り支度をしている時に「あのう、すみませんが、明日って暇ですかね?」とナンパされた。振り向いてみれば、イタリア人男性と日本人男性。日本人男性の方は面識があった。彼は日本文化週間3日目に催される居合いの演武を任されているのだ。
 話しを聞くとどうやら演武中に「切られ役」が欲しいらしい。僕はこれでも小学校2年から高校に入るまでは剣道場に通っていた。中学剣道部では練習には顔を出さなかったが、試合だけは招集がかかったものだ。段級試験は、小学校の時に1度だけ受けたが、それ以来受けていないので、段保有者ではない。居合道に触れる良い機会だと思えた。
 「要するに、だまって切られれば良いのだろう」と甘いことを考えていたが、剣道の様にはいかない。授業が終わり昼食も取らずに折り紙コーナーへ直行。1時間程折り紙を見て、折り紙に、はまりつつあるイタリア人に後を任せ、居合いの打ち合わせをする。演武を行うのは日本人で、日本に留学経験のあるイタリア人が説明をする、という風に当初段取りが決まっていた様だ。だからこそ、僕は「舞台の上で潔く切られよう」と思っていたが、次から次へとやることが増えてくる。
 僕はイタリア人が持ってきてくれた柔道着の上胴着だけを着、帯を締める。同じくイタリア人が用意してくれた木刀を腰に差すが、ズボンは私服のままなので、何をしたいのだかまるでわからない格好になった。居合道と剣道の違いは、簡単に言えばクローズかオープンかだろうか。居合いの場合、型に従うが、剣道は相手と打ち合う。つまり居合いで「切られ役」を演ずるということは、僕もその型を覚えなければならない、ということだ。
 リハーサルは1度だけ、予定している型は40以上ある。おまけに切られ役だけでなく、ちょっとした原稿も読まなければならなくなった。この時、既に折り紙のことなど頭に無い。演武が行われるのはペルージャ外国人大学で1番広い講堂である。居合いともなると「SAMURAI」に興味のあるイタリア人が押し寄せるのだ。千羽鶴よりも、カブトを折って、被って行こうかとも考えた。
 居合いの前には、イタリア人による「日本刀の歴史」講演があり、その時点で既に講堂は立ち見状態だった。おまけに当初の予定よりも30分近く遅れている。気がつけばペルージャ大学の教授まで見学に来ていて、舞台に上がる前に挨拶。しかも演武が始まる前にはペルージャ外国人大学学長の挨拶まであり、「IAI-DO」に期待が高まった。
 演武はほぼ1時間程で終了した。特に失敗することもなく、時間に合わせて臨機応変に予定を変更して上手く立ち回れたと思う。僕の大学の教授も満足していた様子であった。演武を見せた日本人男性は、その後写真の嵐。袴姿にゲタを履き、模擬刀ではあるが刀を腰に差したその姿はちょっとした侍である。僕は米国映画に出てくるようなヘンテコ日本人の格好で、客観的に見たら笑えてしょうがなかっただろう。友人のイタリア人は「写真のフラッシュは無いけれど、30回以上も切られて、それでも生きてるんだから良いじゃん(爆)」と大爆笑である。
 明日が日本文化週間最終日。聞いたところでは千羽鶴まで後300羽程足りないとか。この3日間で折り紙に興味のあるイタリア人は、かなり上達している。多分この調子でいけば千羽鶴が完成するだろう。完成せずとも、この日本文化週間の目的はかなり達成した観がある。