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最近は写真日記。

家電と携帯と情報管理と倫理

 先日、帰宅すると家の電話が鳴っていた。僕は家の電話番号は、ほぼ誰にも教えていないので、家電が鳴ることは稀である。友人には必ず携帯電話の番号を教えるし、何か登録をする時も必ず携帯電話の番号を記入する。イタリアに留学している学生が、必ずしも自宅に電話線を引いているとは限らないので携帯電話の番号を用いるのが一般的であるが、僕は日本に居ても、まず家電に出ることはない。
 家族はそれぞれ携帯電話を持っているし、店の用事であれば、店の方に連絡が行く。実家にかかってくる電話など、ろくなものが無い。つまり、僕個人に用事があれば携帯にかかってくるだろうし、家族の誰かに連絡事項がある場合でも、家族の携帯に電話をかけるはずである。
 また何年か前までは部屋に子機があったが、今では電源を抜かれ部屋の飾りになっている。代わりに僕の実家では、家の中に居ても携帯で連絡を取り合う。これは別に家が広いという訳ではなくて、各自の部屋に居る限りは、それぞれに何かをしているので、どうしても用事がある場合は携帯で連絡をすることになる。こういう所も「おかしな家族」と言われる所以なのだろう。友人が居る時に、下の階から母が僕に電話してきたりすると、「え?家の中なのに、携帯で連絡取り合ってるの?部屋に居るんだから、直接来たら良いのに」と、誰もが一様の反応を示すのだ。
 話しはイタリアに戻る。誰だろうと思い電話に出ると、「もしもし?ain_edさんですか?」とノイズ混じりの回線で、イタリア人の営業トークが始まった。「SKY*1にお安く加入できるんですけれど、どうですか?初期費用は全て無料。後は毎月30ユーロ払うだけで、60チャンネルは見放題ですよ?え?何?興味ない?どうして?値段が高いですって?でも60チャンネルですよ?そんなに高くないでしょう」と、中々電話を切らせてもらえない。
 日本のYahoo!BBや、有線、CSチューナーの勧誘を思い出させる。この間帰国した時も、ドンキでレジで支払いをした直後に「今、買い物をされたお客様全ての方にくじ引きを引いてもらっているんですよ。無料で。豪華商品もありますから、どうぞ」と、ドンキの店員とは明らかに違う若者が、赤い三角くじの箱を振っていた。とりあえずくじを引くと、結果は2等賞。「出ました!2等賞です。おめでとうございます、豪華商品ですよ。今日で3人目」「はぁ。何を頂けるのでしょうか?」「こちらのですね、CSチューナーとスカパーの初期費用が無料になります」「はぁ。スカパーには加入しませんが、チューナーは頂きます」「お客様、それはできません。加入して頂かないことには、チューナーは(以下略)」という感じである。
 今回も「学生でお金がない」と言って電話を切ったが、後々断る理由として「家にテレビが無いから」が1番適当だと感じた。腑に落ちないのは、彼らが何処で僕の家の電話番号を知ったかである。今まで友人以外でかかってきたのは、間違い電話くらいである。今回は僕が名乗る前に、相手が僕の名前を知っていた。企業に僕の名前と電話番号が流れる様なことはまずしていないので、考えられることは一つしかないのだ。
 それはテレコムイタリアである。僕は前述の通り、外に出ても携帯電話の番号しか用いないので、テレコムイタリア以外に、僕の名前と家の電話番号を揃えて持っている企業はない。しかも僕が電話線を引いたのは去年の10月後半だから、半年もしない内に既に僕の個人情報が流出していることになる。
 例えば僕が日本でNTTで回線を引き、誰にもその電話番号を教えなかったら。僕個人を知る人間が、色々な情報を駆使して、電話番号を得ることはできるだろうが、ただの営業でそこまでして電話番号を調べたりしないだろう。となれば、明らかに電話会社が顧客情報を流していることになる。
 他にも経験がある。イタリアで携帯を購入して少ししてからのことだ。ある旅行会社に名前と携帯電話番号を渡して以来、DMや変な勧誘の電話がかかる様になった。友人・知人には教えることはあっても、やはり企業に流れる様なことは、その旅行会社以外していなかった。当時の滞在許可証の連絡先にしても、大家の電話番号になっていたのだ。
 日本では顧客情報が流出する度に大きな問題になる。これは近年メディアで取り上げられる様になったが、社会に情報管理と情報倫理が求められているのだ。その背景にはインターネットの普及に依る、個人情報の流出に影響を受けているのだろうが、それ以外にも携帯電話などの個人を特定する媒体の普及があるのだろう。スパムや迷惑メールなども、いつも後手に回りながらも企業はそれを改善させようという意識は見られる。
 しかしイタリアにはまだそういう意識は芽生えていないようだ。ITどころかインフラがままならないのだから、そこまでの意識は無いのだろうが、個人情報は流用するものだと考えている様で怖い。
 また友人のヴェローナ出身で、日本留学経験があるイタリア人と一緒にネットカフェに行った時のこと。彼はあまりの回線の遅さと、PCの古さに「まるで第3世界だ」と呟いた。Windows 98が主流だったりするので、そう言われてもしょうがない。しかし1番の問題は、ネットカフェのPCが簡単に他人のモニターを覗ける様に配置されていることだ。振り向きさえすれば、他の全ての人間が何をしているかまる分かりなのだ。学校やショップのPCならばしょうがない。しかしお金を払っている以上、最低限のプライバシーは守られるべきだ。具体的に言えば、目線を少しずらすだけで、隣の人間が読んでいるメールを覗き見ることができる様な配置に心遣いがあるとは考えられない。
 テレコムや携帯、ネットカフェにしても、イタリアではまるで情報管理されていない。当初ペルージャだけかとも思ったが、携帯に引き続き、家電でも同様の結果になった以上、イタリアがそういう状況にあると考えて間違いないだろう。というより、僕はそう思っている。

*1:日本のスカパーみたいなもの