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最近は写真日記。

シエナ・フィレンツェ小旅行 feat. チャー&TAMA

 今月末には日本に帰国するチャーくん。その帰国に合わせて高校のサッカー部の後輩であるTAMAが、13日、日曜日の夜にペルージャに到着した。時差ボケ全開で、その日に、僕の所にチャーくんと共に挨拶に現れ、頼んでいた本などを持って来てくれた。第一印象はチャーくんとは違って、一見大人しそうな好青年。「こう見えて、偏差値は高い奴なんで」とチャーくんは紹介してくれたが、確かに真面目そうである。初日は長旅の疲れもあってか、口数も少なく始めての海外に緊張している様子だった。何よりも僕の下ネタトークに打ちのめされたらしく、最後の方は「…あ、え、いや」と口を閉ざしてしまっていた。と言っても、挨拶程度の下ネタトークである。
 それから時間が合えばペルージャ観光をしたり博物館紹介をしたりで、TAMAとの距離を着々と縮め、軽い下ネタならば動揺しない程度にまでは成った。チャーくんはそれを見ながら「もうちょっとすればね、あいつももっとしゃべり出しますから」と、完璧にサッカー部の先輩の顔に成っていた。
 そんなチャーくん&TAMA、そしてもう1人の友人とシエナフィレンツェに観光に出かけた。ペルージャからシエナまではバスが出ていて、1時間半もあれば着く距離である。チャーくんは見かけに依らず乗り物酔いをするので、席に着くと直ぐに眠りに入ってしまった。残された僕とTAMA、そしてもう1人の友人は定番通りしりとりを始めたのだ。最初の内はただの時間潰しであったはずが、罰ゲームが決まると本気になってくる。その罰ゲームは「[世界で1番美しい広場]と言われるシエナのカンポ広場で、恥ずかしい事を大声で叫ぶ」である。
 しりとりの順番は僕の後にTAMAと成っており、順番からして作為的だった気はする。今回絞られた言葉は「る」。
僕「カール」
TAMA「…る、ルクセンブルク
僕「クール」
TAMA「(溜め息)…、ルール!」
僕「ルノアール
TAMA「え?…、る……、ルイ・コスタ?」
僕「タール」
TAMA「…………、ルイス…エンリケ」
友人「け?ケガ」
僕「が?…、ああ、ガイウス・ユリウス・カエサル
TAMA「ハァ……………」
 そして彼は考え込んでしまった。ちなみに1時間半ずっとTAMAは「る」で始まる言葉を探していたらしい。しかし既にタイムリミット。彼が「ルチャ!」と叫んだ時にはバスはシエナに到着し、彼の負けが確定していた。車中ずっと寝ていたチャーくんも、しっかりとしりとりの結果を聞いていて、「じゃあ、あれやってもらおうかな。サッカー部恒例の」と、ゲームに参加していなかった癖に1番美味しいところを持っていったのだ。流石は、ちゃっかりにゃんにゃんチャーくんである。
 「え?あれやるんですか?……、わかりました」と彼ら先輩後輩2人の間では既に会話が終わっている。TAMAを見ると覚悟の決まった顔に変わっていた。「うちのサッカー部で恒例になっていた自己紹介をやってもらおうかと。学年と名前と抱負を叫んでもらうんですよ」既にチャーくんは先輩の顔から悪い顔に成っている。
 カンポ広場が近づくにつれ「ああ、嬉しいはずなのに…、あんまり行きたくないかも…」とTAMAが落ち着かない。「シャキっとしろ」と先輩から悪い顔に成ったチャーくんが茶化すも、あまりTAMAには届いていないようだった。罰ゲーム場所のカンポ広場は、まだ早い時間だった為に運良く観光客が少ない。居たのはイタリア人高校生ばかりであった。
 「じゃあ、準備ができたら行ってもらおうかな」とチャーくん(悪)がサインを出し、とぼとぼとTAMAはカンポ広場の中心に歩き出した。「準備ができたら片手上げてな」とチャーくん(悪)が声をかけると、意を決したのか少しして、恐る恐るTAMAは左手を挙げた。僕は少し離れたところからデジカメ撮影である。
 「K西学院大学1年!TAMA!今年こそは絶対に彼女をつくってみせるぞ!」と一息に叫んだ後、カンポ広場をダッシュ。これは逃げのダッシュでは無くて、先輩の元へ駆け寄るダッシュである。つまり広場の中心で叫んだ後、広場を縦断してチャー先輩の元へと走って行った。周りにいたイタリア人は一瞬キョトンとしていたものの、直ぐに歓声で答えてくれていた。TAMAを見るとハァハァ言いながら、顔は真っ赤である。歓声に答えて手を挙げているのは何故かチャーくんであった。その横で一応、僕とTAMAはハイタッチ。
 下ネタに関してはウブでも、チャーくんがイタリアに呼ぶだけのことはあって度胸はバッチリであった。ウジウジせず、イヤイヤせず、切り替えが早いのは、やはりサッカーを通して培われたものなのだろう。「世界で1番美しい広場」の中心でIを叫んだ日本人を僕は始めて見たのである。
 それからシエナを散歩し、昼食後フィレンツェへ。僕は久しぶりのフィレンツェである。思い出してみると、どうやら2003年の3月以来フィレンツェには行っていない。ドゥオモのクーポラには足場が組まれ、何か作業をしていた。修復か清掃か。TAMAの買い物を済ませ、フィレンツェのラーメン屋へ。僕は2年間のイタリア生活で始めての日本料理屋だったが、TAMAは「え?この間も来たんですよ。でも米食わないと、食った気にならないじゃないですか」と常連面であった。多分しりとりで苛めた、仕返しである。食後はペルージャへ。予想通り30分程遅れるが、問題なく到着。
 その帰り道で「今日、面白かった?っていうか、イタリア面白い?」とTAMAに聞いたところ、「今日の自己紹介とかですか?いやーどうですかねぇ。今のところイタリアに来て、1番の衝撃は下ネタなんで…」と下を向いてしまった。やはりいくら度胸が座っていても、下ネタは経験がものを言うのかもしれない…。